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東シナ海を超えて「KEEP28」で予防歯科を紡ぐ

社会と予防歯科を繋ぐ

~日本の先進的な予防歯科から始まる異分野の新たな共創~

台湾の歯科医院は歯科医師とアシスタントで運営され、歯科衛生士がいません。日本では日常的に耳にするようになった予防歯科。その重要な担い手の歯科衛生士という職業そのものが台湾にはないのです。日本では主に歯科衛生士の予防業務として行われているスケーリングは、台湾では歯科医師が担っています。筆者の体験からですが、台湾で行われている予防歯科業務は十分なものとは言えず、治療中心の日本の一般歯科レベルで、非常に大雑把な感じで行われています。

そんな現状の台湾で、「なぜ予防歯科?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。その無謀とも思えるチャレンジの火付け役は、富士通株式会社ヘルスケアソリューション事業部です。富士通と聞けば、多くの人はスパコンの「京」、あるいはノートパソコンの「FMV」を思い浮かべると思います。確かに多くの人が想像するようにコンピューター技術は富士通の基幹ですが、人の幸せのために発展する分野に企業の基幹を繋げるインフラをつくることが、21世紀の企業価値といえます。富士通ではコンピューター技術で社会課題を解決するソーシャルビジネスとして、ICTヘルスケアソリューションの構築に取り組んでいます。そこでは、すべての生活者が安心・安全に健康に公平な医療サービスを受けることができる健康長寿社会のインフラづくりを目指しています。

現に富士通では歯科医院と生活者を繋ぎ予防歯科を普及させるインフラを、2016年に予防歯科の魁(さきがけ)日吉歯科診療所(山形県酒田市)の熊谷崇理事長と共同で開発しています。レントゲン写真や口腔内写真、唾液検査と歯周病検査、歯科衛生士のコメントなど、口の中の情報をクラウド環境にアップロードするサービスです。生活者はスマートフォンやパソコンでいつでも自分の口の中の情報を見ることができ、ICTを通じて予防歯科を身近なものにしています。

2007年生まれの子どもは、100歳まで生きる確率が50%と推測される現在。企業・医療・教育・行政の各分野が連携して、「人生100年時代」という社会課題に取り組むことは、もはや時代の要請といえます。富士通ヘルスケアソリューションではオーラルフィジシャンと称する予防歯科グループと連携、「KEEP28」をスローガンとして、歯科医療従事者、生活者、企業に予防歯科の価値伝達をしています。「KEEP28」とは、生涯を通じて28本の歯を健康な状態で維持することが、QOLの向上、健康寿命の延伸に繋がるとする予防歯科のキーワードです。

「KEEP28」の意識を広める場として大学にも出向いています。2018年12月に法政大学保健体育センターが、法政大学履修証明プログラム「健康とスポーツ」開設記念シンポジウムを開催しました。その第1部 健康パートの講演で「口腔から全身の健康へ向けた先進的な取り組み~KEEP28全ての歯を守ろう!~」と題して演壇に立ったのが、前述した歯科医師の熊谷崇氏です。「人生100年」といわれる時代を迎え、国民全体における健康意識とともに、東京2020大会をきっかけとしたスポーツへの興味関心も非常に高まっていることを見据えて、歯科予防受診の低い大学生を中心に地域社会に向けて「KEEP28」の意識を発信したものです。一般大学と予防歯科を繋げたのは、富士通ヘルスケアソリューション事業部だったのです。

法政大学での講演に、台湾の中華民国経済部が設立した財団法人で、台湾科学技術の発展における重要拠点とされるITRIの所長一行を富士通が招待していました。その講演に感銘を受けたITRI所長の行動は早く、数ヶ月後には山形県にある日吉歯科診療所に出向き、自ら予防メインテナンスを体験しています。こういった経緯があって、国立台湾大学歯学部とITRIでの日本発の予防歯科の講演が実現したのです。

台湾各所での講演は成功裏に終わりました。それは、講演の翌週に唾液検査を台湾の歯科大学で取り入れたいと、日本の唾液検査キット選択の打診が富士通ヘルスケアソリューション事業部にあったことからも明らかです。日本のICT企業富士通が、社会課題の解決をするために予防歯科のグループと連携したことから、「KEEP28」という概念は日本の一般大学を経由して台湾まで飛び火したのです。冒頭の歯科衛生士のいない台湾で「なぜ予防歯科?」の解は、企業と予防歯科グループの連携による地道な予防歯科啓発活動の中にあります。そこには一企業、一歯科医院の利益よりも「世のため人のため」といった社会貢献への思いが込められているのです。社会の課題をビジネスの手法でもって分野を乗り越えて解決すること、企業と予防歯科の連携への思いが東シナ海を超えたのです。このことに、私たちは便利なモノづくり以上の企業価値を認めなければならないでしょう。(文責クレセル伊藤)

2019年5月30日、31日に台湾で行われた講演の様子

ITRI

ITRIショールームにて日吉歯科診療所 熊谷崇理事長、ITRI 研究員、富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部の面々

ITRIショールームにて日吉歯科診療所 熊谷崇理事長、ITRI 研究員、富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部の面々

台湾工業技術研究院 ITRI

台湾工業技術研究院 ITRI 【WEBサイトはこちら】

ITRI会議室入口の熊谷先生講演ポスター

ITRI会議室入口の熊谷先生講演ポスター

ITRI会議室で講演する熊谷先生

ITRI会議室で講演する熊谷先生

ITRI会議室で講演する熊谷先生

ITRI会議室で講演する熊谷先生

ITRI会議室で講演を通訳する富士通ヘルスケアソリューション事業部社員

ITRI会議室で講演を通訳する富士通ヘルスケアソリューション事業部社員

ITRI会議室で企業理念、事業指針を説明する富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部

ITRI会議室で企業理念、事業指針を説明する富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部

ITRI会議室で企業理念、事業指針を説明する富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部

ITRI会議室で企業理念、事業指針を説明する富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部

ITRI会議室で企業理念、事業指針を説明する富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部

ITRI会議室で企業理念、事業指針を説明する富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部

講演後記念品をITRI所長より贈られる

講演後記念品をITRI所長より贈られる

国立台湾大学

国立台湾大学牙医専業学院第八講堂にて大学病院院長はじめ勤務歯科医師と学生に演題「Creation of new value / Innovation of Dental Treatment」を講義する熊谷先生

国立台湾大学牙医専業学院第八講堂にて大学病院院長はじめ勤務歯科医師と学生に演題「Creation of new value / Innovation of Dental Treatment」を講義する熊谷先生

講義のあと大学病院歯科医師との質疑応答

講義のあと大学病院歯科医師との質疑応答

講義のあと大学病院歯科医師との質疑応答

講義のあと大学病院歯科医師との質疑応答

講義のあとの記念撮影

講義のあとの記念撮影

病院長から記念品を贈られる

病院長から記念品を贈られる

国立台湾大学牙医専業学院病練前で富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部のメンバー

国立台湾大学牙医専業学院病練前で富士通株式会社第二ヘルスケアソリューション事業部のメンバー

国立台湾大学牙医専業学院校門

国立台湾大学牙医専業学院校門