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郡司香織先生:成城7丁目かおり歯科クリニック

患者さんに寄り添い、質の高い歯科医療を提供する

熊谷崇先生の著書と出会い

歯科医師を志した理由について、教えていただけますでしょうか。

 理由はいくつかありますが、最初のきっかけは小学生の頃に教会を通して行っていたボランティア活動です。活動を通して人と話すこと、人が喜んでくれる仕事を一生の仕事にしたいと思うようになりました。その後、高校に進学し、趣味だった読書を通してノンフィクション作家の柳田邦夫氏、医師で作家である渡辺淳一氏の本と出会い医療関係に興味を持つようになりました。当初は英文科の大学受験の準備を進めていましたが、高校3年生の秋、一念発起して手をつけていなかった理系の科目を一から勉強し始めました。歯科医師を目指したのは同業である父の影響が大きかったです。

従来の歯科医療から「予防歯科」に力を入れようと思われたきっかけについて、教えていただけますでしょうか。

 卒後、研修医として東京医科歯科大学へ通うようになり、研修科目の選択で口腔衛生学を選択した時、同窓である熊谷崇先生(日吉歯科診療所:山形県酒田市)の著書を知りました。しかしながら当時は治療の腕を磨きたい気持ちが強く、あまりピンときませんでした。その後、大学病院を離れ、勤務医として臨床経験を積んでいくうちに、繰り返し処置をすることにストレスを感じるようになってきました。そこで再び熊谷崇先生の「クリニカルカリオロジー」を手に取り、歯周病学・カリオロジーをもう一度勉強しなおそうとスタディーグループに所属し、大学の図書館に通って勉強しなおしました。四谷(新宿区)にある父の診療所で10年間実践すると、う蝕・歯周病が激減し、予防歯科の手応えを感じることができました。

開業当初はスキルや知識を重視した採用をされていましたが、2年半経った現在、採用基準で重視するポイントは何でしょうか。(2023年6月現在)

 面接を繰り返すことで私自身の考え方が変わり、今は患者さんの気持ちに寄り添える方と一緒に仕事をしたいと思うようになりました。

患者さん第一の姿勢を示すことが、多くの理解を得ることに繋がります

院内の取り組みと患者の反応について

先生の考えていることが一般生活者である患者さんにはすぐに伝わらないこともあるかと思います。特に新たな取り組み等は、衛生士やスタッフに対しても同様であると思われます。「歯科医師→スタッフ→患者」と伝達する場合、そこには2つの壁がありますが、どのような工夫をされているのでしょうか。

 朝のミーティングで常に私の考え方を伝えスタッフと共有したり、月1回の勉強会では、う蝕・歯周病等について話をしています。また、必要なものは資料にまとめて配布をし自宅で読んできてもらい、お互いに確認をします。一緒に動画を観て話しながら勉強したりもします。
 今はほとんどなくなりましたが私が患者さんに説明をする際は、スタッフに後ろで聞いてもらうようにしました。次第にスタッフの意識に変化が生まれ、私と同じ意見に留まるだけでなく、プラスアルファの意見をも提案してくれるようになりました。
 今ではスタッフの熱意が私のモチベーションアップにつながっています。

スタッフの様に毎日繰り返すことは難しいと思いますが、患者さんに対してはどのような工夫をされているのでしょうか。

 まず最初に患者さんの口腔内写真を撮って視覚的に訴えます。啓蒙動画を見ていただいても良いのですが、スタッフと話し合ったところ、やはり自分達の肉声で、患者さんの表情や様子を見ながら伝えようということになりました。そこで資料を作り口頭で説明を行っています。「あなたのことを真剣に考えていますよ」という姿勢が次第に患者さんに伝わり、今では理解を得られるようになりました。
 また、年末年始に患者さん全員にご挨拶の手紙を送っています。1人、1人の患者さんを思い出し資料を添えながらコメントも書いて送ります。高齢者の方中心に大変喜ばれています。

サリバテストを積極的に取り入れていますが、患者さんの反応はどうでしょうか。

 全ての方が受けてくださるわけではありませんが、やはり検査をされた方はデータを見て「やって良かった」と言っていただけます。口腔内の健康を維持するためにはサリバテストは重要な指標になりますので、もっと多くの方に受けていただきたいのが本音です。例えその場で断られたとしても、種蒔きのつもりで、予防歯科を真剣に取り組んでいることを患者さんに知っていただき、今後の検査に繋がればという思いで説明を行っています。

院内の明るい雰囲気も患者さんに通っていただくための大事な要素です

教育・マネジメントについて

患者さんが継続的に通院していただくための取り組みや、工夫をされている点がございましたら教えていただけますでしょうか。また、 患者さんの行動変容について、印象的なエピソードがございましたら教えてください。

 治療に関しては継続して通っていただけるよう、時間をしっかり確保して丁寧な説明と治療を行うように心掛けています。丁寧な説明を行うには記録を残すことが非常に重要です。写真やデータを見せることにより関心を高めてもらい、変化を実感してもらうことで、クリニックに通う意味を理解していただいていると思います。途中で治療をやめてしまった患者さん以外は9割以上がSPTにいらっしゃっています。
 また、患者さんが不快にならない様に雰囲気作りにも気を配っています。 清潔に保つことはもちろんのこと、スタッフに前向きな言葉をかける様に心掛け、ストレスのかからない様に常に話し合うようにしています。今のスタッフは本当によくやってくれるので素直に感謝の気持ちを伝えるようにしています。 スタッフが楽しく働いている様子は患者さんにも伝わりますので、実際に患者さんから「みんな楽しそうで雰囲気が良い」とお褒めの言葉をいただきます。このようなことも継続して通っていただくには大事な要素だと思っています。
 四谷(新宿区)で50年開業している父の診療所には親子3代、4代で通われている方が多くいます。そのほとんどが継続されている患者さんです。当院のコンセプトとは異なりますが、継続して通っていただくという考え方は、父の診療所で勤務していた私にも染みついています。四谷では患者さんとのコミュニケーションを大切にしていることから、当院にも居心地の良い空気が流れるのは自然なことなのかもしれません。

 貴院は小規模医院ですが、スタッフに対する健康面の配慮が行き届いている印象を受けます。その具体的な内容を教えていただけますでしょうか。

 健康診断の結果を考慮してスポーツジムに入会してもらったり、食事の栄養バランスを考えてもらうためスタッフには、わっぱ弁当箱をプレゼントしました。私もお揃いで使っています。

貴院の所在地である世田谷区成城学園の患者傾向の特徴を教えてください。
また貴院へ通院してから患者さんの口腔内状況や診療二―ズに変化はございますでしょうか。

 地域の特徴については、今まで四谷(新宿区)にある父の診療所で勤務していた時期が長いため、そちらとの比較になりますが、当院は保守的な地域だと思います。理不尽なクレームをつける方はほとんどいませんし、比較的穏やかな方が多い印象です。
 患者傾向の特徴は、業者を使った宣伝をあえてしなかったため、痛いところだけ治してという方はほとんどおらず、主訴が定期検診希望という方が大半です。手が付けられない様な口腔内が崩壊した方もほぼいません。
 診療ニーズですが、写真などの口腔内データを取ることによって治療前と治療後の変化を伝えるようにしています。特に歯周病治療は患者さんの協力なしには効果が出ません。治療する意味を毎回丁寧に説明したり、治療以外の話をすることで、その日の治療内容や治療計画を変えたりすることもあるので、患者さんとのコミュニケーションを大事にしています。
 一人ひとりの患者さんを大切にし、その思いが患者さんに伝わることで、治療方針をすんなりと受け入れてくれますし、ホームケアを頑張ってくれる方が多くなりました。

予防歯科において歯科衛生士の役割は非常に大きいですが、教育・マネジメント面で大切にされていることがありましたら、 教えていただけますでしょうか。

 当院の衛生士はとても勉強熱心だと思います。彼女の得意なところを発揮できるような場を設けられるように努めています。教育に関しては今は講習会もアーカイブで見れるようになりましたので時間をつくって一緒に勉強したり、患者さんに関してはサブカルテに会話の内容や口腔内の様子、治療内容などを記録してもらっていますので、時間があるときに話し合ったりしています。また、処置後はドクターがチェックを行います。そうすることにより患者さんも衛生士も安心するようです。

良くも悪くも直接評価をいただけることに、やりがいを感じます

今後の展望・展開について

経営面で大変なこともあるかと思いますが、ご自身で開業されてから仕事のやりがいはいかがでしょうか。

 体力面、精神面で疲れはしますが、やりがいはあります。今まで父の診療所で勤務していた時は、父のお陰という言葉が必ず最初に付いていましたが、今はそれがないです。
スタッフ含め私が行ったことに対して、良い意味でも悪い意味でも全て直接自分に響きます。独立して人生観が変わりました。周りの人々のサポートがあって今の私があると日々感じています。感謝しかありません。

貴院の今後の展望・展開について教えていただけますでしょうか。

 経営の安定もそうですが、まずは患者さんに通って良かったと喜んでもらえるように、スタッフには高い志とやりがいを持って楽しく働いてもらいたいと考えています。人員を増やすことでスタッフに時間のゆとりを持ってもらい、勉強会や富士通予防歯科クラウドサービスの作業時間を充分に確保したいです。それがスタッフの成長を促し、患者さんの満足度に繋がっていくのではないかと思っています。また医院のシステム作りでは、口腔内の正確なデータを記録し精査できる仕組みを今後確立していく予定です。

先生による自己評価(5点満点)