第3回「令和時代の予防歯科」セミナーレポート

予防歯科を社会に推進する富士通
全社員向け健康セミナー 第3回「令和時代の予防歯科」レポート


セミナー情報

日時

  • 4月22日(木)

開催形式

  • オンラインセミナー(富士通研究所 岡田記念ホールより配信)

式次第

  1. ご挨拶
    【東様(富士通健康推進本部 統括部長)・大浦様(富士通Japan株式会社ヘルスケア事業本部)・大越様(富士通健康保健組合)】
  2. 令和時代の予防歯科~予防歯科について概論~
    【畑慎太郎 先生(アップルデンタルセンター院長)】
  3. 令和時代の予防歯科~世代別のメインテナンス~
    【花岡佑み子 様(アップルデンタルセンター 歯科衛生士)】
  4. Q&A
  5. 【参加者の皆様からの質問】

参加者

  • 約3000名

配信会場の様子


講演ダイジェスト

ご挨拶

大浦 様(富士通Japan株式会社ヘルスケア事業本部)
大越 様(富士通健康保健組合)

 本セミナーは富士通健康推進本部、富士通健康保健組合、富士通Japanヘルスケアソリューション開発本部の共同開催です。ヘルスケアソリューション開発本部では、世界的に予防歯科学で高名な熊谷崇先生(日吉歯科診療所:山形県酒田市 開業)と共同で「富士通歯科クラウドサービス」を開発し、予防歯科医院向けにサービスを提供しています。
 また社員への啓発活動にも取り組んでおり、過去に蒲田・品川の健康支援室と共同で予防歯科セミナーを開催し大変好評だったため、このたび全社健康経営推進施策の一環として開催するに至りました。お申込者は約3000名と当初の予定人数を大幅に上回り、皆様の予防歯科への興味、関心の高さを実感しています。

ご挨拶

東 様(富士通健康推進本部 統括部長)

 この度、初となる歯科の全社イベントを開催いたします。初開催ながらお申込者3000名というのは、過去最大規模の社内セミナーであると同時に、我々のこれまでの成果でもあります。そして皆様の反応は講演後のアンケートを通して、口腔から全身の健康へと繋げられる様に、次の施策を考えるための岐路にさせていただきたいと思っています。

令和時代の予防歯科 ~今からでも間に合います~

畑慎太郎 先生(アップルデンタルセンター院長)

【歯科医療の新しい価値・新しい形】

 約30年前までは80歳で2人に1人が総入れ歯という時代でした(2016年歯科疾患実態調査)。その後80歳で20本の歯を残す「8020運動」が開始されました。ただ時代ともに寿命も延びたため、そう簡単に口腔内のトレンドは変わりません。歯の減少を年齢のせいにする人もいますが、これがご自身の指だったらどうでしょうか?ことの重大さが分かるのではないでしょうか?あくまでも8020運動はむし歯洪水時代の旧常識です。現代の新常識は「KEEP28」。いくつになっても28本、全ての歯を守るための歯科医療を提供することが、「歯科医療の新しい価値・新しい形」だと考えます。

【歯を喪失する主な原因とその対策】

 喪失する原因の90%は「むし歯・歯周病・破折」です。これらの共通する問題点はただ歯を失うだけではなく、歯科にかかりながら口腔の健康を損ねている点です。
 またスウェーデンにあるアクセルソン博士の診療所では、メインテナンスを30年間(1972~2002年)継続調査したデータがあります。以下のデータからわかることは、歯は加齢により喪失するものではない。つまり、良質なメインテナンスプログラムは余計な治療を減らし歯の喪失を最小限にするのです。

【メインテナンス患者の平均喪失歯数】

20~35歳 36~50歳 51~65歳
~30年(257人) 0.4 0.7 1.8
  • 初診時年齢
  • 継続来院年数
  • 単位:本

出典)Axelsson et al. (2004)

【メインテナンスを成功させる秘訣】
  1. 知る
  2. 疾病を理解する
  3. プラークコントロール
  4. 楽しむ
【1. 自分のことを知る】

・口腔内撮影
まずは口腔内を様々な角度から撮影し12枚のカットに収めます。手鏡等でご自身が確認する場合はわずか2枚程の範囲しか見えません。次に染め出しを行い12枚法写真を用いてブラッシング指導を行います。このように視覚化して磨けていない箇所を確認し改善へと繋げることが重要なのです。

・エックス線写真
通常は顎全体を1枚で撮影するのですが、それだと病気の見落としや正確性に欠けますので1本1本細かく撮っています。これによりむし歯、歯周病、過去の治療のクオリティも全て把握できます。

・歯周ポケット検査
4ミリ以上が歯周病の傾向があると言われています。昔に比べて残存歯数は増えてきていますが、同時に歯周ポケットを持つ人も増えてきています。

【4mm以上の歯周ポケットの分布(%)】
2011年 2016年
35~44歳 24.3% 39.5%
65~74歳 46.5% 60.5%

出典)厚生労働省 平成28年 歯科疾患実態調査(2011~2016)

【歯肉から出血がある人の分布(%)】
2016年
30歳~ 41.7%
40歳~ 48.0%
50歳~ 40.0%

出典)厚生労働省 平成28年 歯科疾患実態調査(2016)

よくネットニュース等で話題になっている「30歳以上の8割が歯周病である」というのは、上記表の4mm以上のポケットと出血を足した数字です。

【2. 疾病を理解する】

歯周病は真面目に取り組む(歯石除去・ホームケア)と治ります。「治る=細菌を取り除きバリア機能を回復させる」ことを言います。ところが細菌を取り除いても治りづらい歯周病があります。

【歯周病悪化の可能性がある要因(リスクファクター)】
  • 不潔な口腔衛生
  • メインテナンスの欠如
  • 糖尿病
  • 内服薬
  • 肥満
  • ストレス
  • 飲酒
  • 喫煙
  • 栄養不足
  • 性別
  • 加齢
  • 遺伝

以上の要因によりメインテナンスだけでは不十分な場合があります。ここで大切なのはどの要因を見直すべきか計画を立てメインテナンスに入ることです。

【むし歯の捉え方】

歯科検診ではむし歯の進行度合いにより分類分け(C0~C4)を行います。歯からミネラル分が流出した初期症状でも単に様子を見ましょうと言うのではなく、「危ない状態のため、普段から○○に気を付けて様子を見ましょう」と細分化することが重要です。

【気を付けるポイント】
  • 環境(う蝕経験、関連全身疾患)
  • 食事(食事内容、飲食頻度)
  • 細菌(プラーク菌、ミュータンス菌)
  • 感受性(フッ化物プログラム、唾液分泌速度、唾液緩衝能)

これらの要因によりメインテナンスだけでは不十分な場合があります。ここで大切なのはどの要因を見直すべきか計画を立てメインテナンスに入ることです。

【再治療の原因】

歯は削って詰めてもケアをしなければ10年程しか持ちません。再治療の原因は治療箇所の二次う蝕であり、半数近くの47.8%を占めます。この様に治療を繰り返すと歯は死にます。歯科医院に通いながら歯は死ぬことになり、歯科医師は人生の大半を治療のやり直しに費やすことになるのです。

【正しいむし歯治療とは・・・】
計画を立てて進行を停止させること
  • 計画
    すぐに削るのではなく、むし歯の進行を止めるのはどの要因に力を入れるべきが計画する
  • 進行の停止
    むし歯の進行が停まると削る場所が少なくて済む、そして二次う蝕が減り歯の寿命が延びる
【3. プラークコントロール】

むし歯にならないために「歯ブラシをしましょう」と言いますが、日本人の ※90%以上が毎日行っています。ところが日本人の90%以上が磨き残しがあります。ただ「歯ブラシをしましょう」というのではなく、正しくは「効果的なプラークコントロールをしましょう」というのが適切です。プラークとは歯の表面に付着している細菌のかたまりです。歯ブラシだけでの除去はできませんので、あわせてフロスや歯間ブラシを使用することが効果的です。

※出典「歯科医療による健康増進効果に関する研究」第1回追跡調査報告書2016年6月 公益財団法人8020 推進財団

【4. 続ける・楽しむ】
人生100年時代に相応しいお口の健康とは・・・
  • 口臭がないこと
  • 清潔であること
  • フロスとメインテナンスは普通にやっていること
お口を健康的にしておくと・・・
  • 何でも食べられるかもしれない
  • 見た目も若々しいかもしれない
  • 病気になりにくいかもしれない
  • 歯科医療費、医療費がかからないかもしれない
  • いつまでも働けるかもしれない

【令和時代の歯科検診】

一般的な検診は、むし歯があるかないか、被せ物や詰め物等を記録するだけの無機質なものでした。そのためご自身の歯が全部で何本あるか等、基本的なことですら認識されている方は少ないのではないでしょうか?そこで、検診結果をより効果的にするために、富士通Japan株式会社 ヘルスケアソリューション開発本部と共同で開発したのが、富士通予防歯科クラウドサービスの「診査結果報告書」です。
上記の報告書は口腔内を数値化したシンプルなデータのため、誰が見ても口腔内状況を理解できます。この様なデータを日本人全員が持つことになれば、予防歯科が普及した社会になったと言ってもいいと思います。体重計が目の前にあれば乗るように、歯も同じで傍に数字があるということが凄く大事なのです。

【歯科界と一般生活者のギャップ】

予防歯科を普及させたい我々と生活者には大きなギャップがあります。一方で本日は約3000名の方々にご参加いただいていることからも、その関心の高さが伺えます。我々の予防歯科のメソッド・フィロソフィーと富士通Japan社のIT技術を融合させることで、より効果的なメインテナンスの提供に加え、さらなる予防歯科の普及ができるのではないかと考えます。その結果「KEEP28」の価値が、社会にとって意味のあるものになるのだと信じています。これこそが「デジタルトランスフォーメーション」ならぬ「デンタルトランスフォーメーション」ではないでしょうか。

【最後に】

予防歯科は今からでも間に合います。
多少むし歯があっても間に合います。
50歳からでも60歳からでも間に合います。
始めましょう、予防歯科。

令和時代の予防歯科 ~世代別のメインテナンス~

花岡佑み子 様(アップルデンタルセンター 歯科衛生士)

【担当患者の年齢分布】

現在メインテナンスの担当患者は2090名おり、昨年は1012名来院されました。その来院された方を年代別にみると、50代、60代、40代の順に多く、20代が極端に少ない傾向にあります。若い世代からの予防が大事ですので、今後これを変えていかなければならないと思っています。

【今日からできるむし歯予防】
  • フロスや歯間ブラシで歯と歯の間をケア
  • 歯ブラシは歯磨粉を2センチ程たっぷりと使用
  • 口のゆすぎは1回
  • ゆすぎを1回にする理由は、口腔内により多くのフッ素を留めておくため

【むし歯のリスク】
一般的なむし歯予防というと、以下のことをイメージするかもしれませんが、これだけでは不十分です。
  • 飲み物やお菓子などダラダラ食べない
  • 甘いものを摂るときは食事と一緒にする
  • 就寝2時間前に甘いものは口にしない

当院ではむし歯リスクを9項目に分けて検査します。それによりご自身のウィークポイントを知ることができ、これがむし歯を予防するうえで最も重要なのです。
またリスクには変えられるものと変えられないものがあります。その一つがミュータンス菌であり、この菌が多いとむし歯になるリスクが高くなります。人によりミュータンス菌の数は違うため、一言に甘いものを控えましょうと言っても意味がありません。

【年齢別のケア】
・乳歯生えたて(生後6ヶ月~)

目標:ミュータンス菌を感染させない。
1歳半から3歳までの間に両親や祖父母から感染しやすいため、親子でむし歯予防を。
保護者へ仕上げ磨き指導。本人には歯ブラシを持つ習慣から。

・乳歯完成(3歳~5歳)

目標:乳歯をむし歯にさせない
この時期の生活習慣が今後のむし歯のなりやすさを左右します。
保護者へ仕上げ磨き指導。本人磨きの練習開始。

・乳歯と永久歯が混在(5歳~12歳)

目標:永久歯をむし歯にさせない
生えたての永久歯が最もむし歯リスクが高い。保護者より本人との対話を大切にする。
仕上げ磨きに頼らず本人磨き。保護者へ仕上げ磨き指導。

・永久歯完成(12歳以降)

目標:むし歯と歯肉炎から守る
来院が途絶えやすい時期。とにかく来院してもらえるように。
成人と同じレベルで磨けるように。

・20代~75歳以上

若いうちは特に問題がないため危機感がありませんが、40代になると自覚症状がなくても病気が進行している場合があるため、定期的に歯科に通うことをおすすめします。
60代を過ぎると歯を失い栄養をとることが難しい方も多くいるため、若いうちからケアをすることが大切とお伝えしています。

【予防型の歯科治療の流れ】

初診検査後すぐにメインテナンスに移行できるわけではありません。なぜなら口の中がある程度健康でケアをしやすい環境に整える必要があるからです。

【治療のためのプロセス(初診→説明1→初期治療→評価)】

初診検査後すぐに治療に移行するわけではありません。検査後の「説明1」が重要なのです。なぜなら現状を知り、過去の治療を把握し、未来に起こりうるリスクを知ったうえで治療に入る必要があるからです。
ここでいう「初期治療」とは、口の中を知り効果的なケアの方法を取捨選択し、変化を実感する時間です。実際には染め出し後にブラッシング指導を行いますが、一般的な歯科医院と異なる点は、患者さん自身がお口の問題を自分ごととして捉えて、どのように改善すべきか自発的に行動できるよう意識を変えていただく点です。以上のプロセスを経て治療に入ることが重要なのです。

【メインテナンスのためのプロセス(再評価→説明2→SOT)】

治療とメインテナンスの間にも3つのプロセスがあります。まず治療後にどのような変化があったかを「再評価」して患者さんに「説明2」を行います。次にホームケア等が継続できていない方に対して「SOT(サポーティブオーラルセラピー)」として自己管理の支援・実践期間を設けます。これらのプロセスを経て、ようやくメインテナンスに移行できるのです。

【最後に】

衛生士の役割として「初診」から「SOT」のプロセスは患者さんのサポート・ガイド役を担っています。そして「メインテナンス」に入ると伴走者となり患者さんと協力しあってお口の健康を守ります。ここは伴走というのが大事で、どちらか一方が頑張っても「KEEP28」は達成できないのです。ぜひ皆さんと一緒に「KEEP28」を守っていきたいと思っております。

Q&A (参加者の皆さまからの質問)

Q.子どもに歯周病はうつりますか?

A.歯周病菌がどこからやってくるのかはっきりとはわかっておりませんが、家族に歯周病の方がいらっしゃれば、遺伝的な要因で子どもも歯周病になってしまう可能性はあります。

Q.歯磨きのタイミング・回数は?

A.私の場合は朝食後に軽く磨き、夕食後にフロスと歯磨きを行います。一方当院スタッフは昼食後にも磨いていますので、それくらい幅のあるものです。先程申し上げた通り。回数に関係なくプラークをコントロールすることが重要です。

Q.歯科検診にはどの位の頻度で通えばいい?

A.頻度は3ヵ月~6ヶ月と単純に当てはめるものではなく、歯周病の状態(軽度~重度)にあわせて間隔を決めます。既にメインテナンスに通われていればパートナーである衛生士に相談して決めると良いと思います。

Q.歯科検診は同じ医院に通った方がいい?

A.むし歯というものはその場で診てすぐに削るものではなく、経年変化を見て判断するものです。そのため、その時々で違う人が判断してしまうと5年後~10年後で副作用が出る恐れがあります。削るという最初の判断は慎重になるべきで、同じ人に診てもらうことを重要です。
しかしながら、同じ人が診ても効果的でない場合は客観的なデータを貰うようにしてください。もし貰えない場合は他の医院に移ることをおすすめします。

Q.歯周病の家族がいる場合、気をつけることは?

A.まずご自身が歯科医院に通い口腔内の状態を知り、どのようなリスクがあるかを知ることから始めてみましょう。

Q.良い予防歯科医院の見つけ方は?

A.予防歯科を行ううえで、子どもに教える様な手鏡を持っての歯磨き指導のみでは不十分です。そのためビジュアライズされた画面に自身の口腔内を映してもらいながら、どこが良くてどこがダメなのか、定期的に教えてもらう方が効果的です。この積み重ねがむし歯・歯周病のリスク管理に繋がり、歯科医院任せではなく患者さんの「自分ごと」化にも繋がります。この様な取り組みを実施している医院が良いと思います。また聞き慣れないと思いますが「OP歯科医院(オーラルフィジシャン)」を推奨します。
 一般的に歯の治療は大工仕事に例えられます。多くの歯科医院は図面を持たずに仕事をしていますが、お口の健康を守るうえで本当に必要なのは設計士です。そこで予防歯科で高名な熊谷崇先生(日吉歯科診療所:山形県酒田市)が2000年代初めにOP育成セミナーを創設し私達もそこに参加しました。その設計士の役割については、むし歯・歯周病の2大疾患を生涯に亘り予防を行い、治療が必要な時には最善の選択が出来る人だと思っています。いわば設計士と図面と大工と心の広いクライアントがいてこそ良い作品が生まれると考えます。そのため、このようなセミナーに一般の方が参加してくれることに大変意義があると思っています。

Q.歯ブラシとフロス以外のセルフケアは?

A.基本的なセルフケアは質問の2点ですが、その他となるとリステリン等の洗口液があります。 ただ洗口液にはフッ素が入っていないため、最後に使用すると口の中のフッ素を流してしまうことになります。そのため洗口液を使用する場合は最初に使用しすることをおすすめします。

Q.電動歯ブラシは効果がありますか?

A.結論から申し上げると、効果がある方とない方がいらっしゃいます。それはプラークの付き方に個人差があるからです。付いている場所、厚みが違うだけでケアの方法が異なります。力任せに電動歯ブラシで磨いてしまうと歯茎が下がってしまうことがあるため、かかりつけ歯科衛生士に一度確認していただければと思います。

Q.オーラルフィジシャン歯科医院の見つけ方は?

A.予防型歯科医院紹介サイト「コミュニケーション・ギア」にて紹介しております。その中でも富士通歯科クラウドサービスを利用し、ビフォー・アフターの記録を提供してくれる医院が良いと思います。データを提供することが質の担保にも繋がりますし、腕に自信がないとできないからです。

【司会】
以上でQ&Aを終了させていただきます。
畑先生・花岡様、本日はどうもありがとうございました。