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富士通健康支援室取材

予防歯科を社会に推進する富士通
社員向け健康セミナー「令和時代の予防歯科」が始動

富士通株式会社が開催している社員向けの健康セミナーは、就業後にも関わらず毎回多くの社員の方が参加する人気セミナー。例年、健康支援室が主導して開催する健康セミナーですが、今回は日本の予防歯科をリードする歯科医師のグループと歯科クラウドによる患者情報の提供、市民・企業社員への予防歯科啓発も担っているヘルスケア事業本部の方と連携して企画・開催されました。

その健康セミナーのタイトルは「令和時代の予防歯科」とアップデートな感じで、何か新しいことが始まる期待感を抱かせます。講師を務めるのは“NHK プロフェッショナル 仕事の流儀”でも放映された予防歯科のパイオニア熊谷崇 歯科医師(山形県・日吉歯科診療所)の元で学ばれた歯科医師と歯科衛生士の面々です。

今回の講師陣、東京都西東京市開業のアップルデンタルセンター院長の畑慎太郎 歯科医師と花岡佑み子 歯科衛生士、東京都立川市開業のOPひるま歯科 矯正歯科院長の晝間(ひるま)康明 歯科医師は、すべての歯を守る「KEEP28」を旗印に掲げています。「歯を失う2大原因のむし歯も歯周病も稀な病気です」と言い切る講師陣が、大手IT企業の社員に向けてどんな歯科講話を展開するのか非常に楽しみにセミナー当日を迎えました。

そうは言ったものの、歯科講話には一般の方の関心は低く、この類のセミナーは殊の外あつまりが悪いことを思い知らされている筆者。開演20分前になっても会場の1/4程度の集まりに嫌な感じがしていた矢先、仕事を終えた社員の方が三々五々あつまりだして会場は一揆に満席になりました。会場には中年男性社員の方が目立ち意外な感じもしましたが、ミーティングテーブルの上には筆記用具を広げる方も多く開演5分前には静かに熱気も伝わってきて、まさに「令和時代の予防歯科」のタイトル通り、期待を裏切らない始動となったのです!

それでは当日のセミナー模様をどうぞご覧ください。

開催内容

2019年6月18日(火)

18:00-18:20
予防歯科について概論
【畑 慎太郎先生(東京都西東京市/アップルデンタルセンター 院長)】
18:20-18:40
超重要!20歳までの予防歯科(小児歯科)
※お子様のいらっしゃる方にお勧めです
【晝間 康明先生(東京都立川市/OPひるま歯科 矯正歯科 院長)】
18:40-19:00
世代別のメインテナンス
【花岡 佑み子さん(東京都西東京市/アップルデンタルセンター 歯科衛生士)】
19:00-
質疑応答

会場

  • 富士通株式会社 富士通ソリューションスクエア(蒲田)
    S棟3階 プレゼンテーションルームP2

対象

  • 蒲田地区・お台場地区社員

参加人数

  • 150名(うちWEB配信視聴者30名)

講演ダイジェスト

「令和時代の予防歯科」畑 慎太郎先生

令和時代の予防歯科

畑 慎太郎先生(東京都西東京市/アップルデンタルセンター 院長)

再治療を繰り返えさないために知って欲しいこと

本日は令和時代の予防歯科についてお話いたします。歯の本数は全部で何本あるかご存知ですか?親知らずを除くと28本です。意外と知らない方が多いのです。厚生労働省の調査からは40歳位まで28本存在し、60歳位になると24本になり、80歳位で15本と減少していきます。

日本歯科医師会が主導する80歳で20本の歯を残そうというプロジェクト「8020運動」があり、現在では80歳の方の半分位が目標を達成しています。ただしこの目標には20本の歯がどういう状態で残っているのか、というところまでは問われていません。30歳の方が、今まで治療した歯が10本とします。歳を重ね40歳でも10本、60歳でも10本となれば、平均よりも治療した歯が少ないので良い状態ということになります。日本人の傾向として、若くして治療した歯の本数が多いと再治療のリスクが生じ、それを繰り返すと加齢と共に歯を失っているようです。

皆さんの中でも年に1回の歯科検診を受けていらっしゃる方は多いと思います。この歯科検診でわかることとして、歯の本数、治療した歯の本数、穴が空いているむし歯の本数がわかります。例えば28本の歯があって、治療した歯は10本、中でも穴の空いた歯が3本と言われた方でも、口腔のリスクを知り不具合な箇所を治療してリセットし、定期的に質の高いメインテナンスをしていけば、自分の歯を失うリスクは軽減されるのです。

むし歯の正しい見方を教えます

そこで皆さんに質問です。むし歯になると歯に穴が空くのはどうしてでしょうか?

受講者:細菌が歯のエナメル質を溶かしてしまうため。

細菌ですか?
細菌は穴が開く直接の原因ではありませんね。なぜかと言いますと、穴が空く前からむし歯は始まっているからです。

穴ではないけれどむし歯になりかかっている部分というのは、歯の表面からミネラル分が溶けだしている状態です。その部分をう蝕と言い、穴はう窩と言います。これらをまとめるとむし歯です。ここからは穴になる直前の状態を解説いたします。穴が空く直前は黒く透けて見えます。その状態を見て歯医者さんはむし歯ですから治しましょうと言います。う蝕の状態で時間が経ち食事中に咀嚼しますと、歯のう蝕部分が薄くなっているため、噛む力に歯が負けてしまい穴が空いてしまうのです。ですから、むし歯菌がチクチクとイタズラをするのではなく、物理的に薄くなったところから折れてしまうのです。

個々の歯科医師の判断によって、様子見や削るなど処置が分かれます。患者の皆さんはそれを受け入れるしかないのが現実です。患者さんは歯の茶色部分を見つけると、むし歯ではないかと不安になりますよね。そこに日本人特有の早期発見・早期治療という思い込みが作用してしまうのですが・・・

患者さんの未来を考えたむし歯治療

歯の茶色や黒に変色した箇所を削って、そこに樹脂やセラミックス詰めたり被せたりして修復します。すると歯は治った感じになりますよね。この状態が永久に続くなら良いのですが、直したはずの歯も二次的にう蝕が発生します。茶色い部分の中でむし歯が広がっていってはいけないと想定して治療するわけですが、このような隠れう蝕の発生率は若年者で15%程度という報告もあります。若年者(18歳未満)でさえこの程度ですから、大人になると歯は固くなるため、さらに隠れう蝕は少なくなります。ですから初期のう蝕に関しては「様子を見ましょう」か「進行する恐れがあるため削りましょう」の2択だけではいけません。

その2択に加えて「普段から○○に気を付けて経過を見ていきましょう」や、「あなたは○○をやってください」といった予防プログラムが大切です。これこそ歯科医師と患者さんとの間に築く「shaping tomorrow with you」(※富士通社のコーポレートメッセージ)です。

どのような「shaping tomorrow with you」をしているかと言うと、左側が初診で右側が3ヶ月程通っていただいた状態です。歯茎がブヨブヨな状態から締まってきております。更に拡大しますと初診時は歯の全体が溶けて柔らかい状態です。その歯の表面を綺麗にしていくことで、再石灰化の機能を発揮させると歯は固くなっていきます。そして歯茎も引き締まっていきます。そうしますと右側(通院3ヵ月後)の歯の穴が明確になります。その様になってから削って詰めましょうというのが正しい流れです。

この様に最小限の範囲で治療をするということが、もの凄く大事なことなのです。重要なのは歯の表面を歯科医院・自宅の両方で綺麗にして、そこからう蝕診断を行うことです。

自分の口は歯科医院任せにしない

このようなう蝕診断の後に行うことは、ご自身のう蝕本数と平均本数との比較・1日の食事の回数の確認・プラーク量の確認です。加えてフッ化物の使い方は大事で、歯磨きペーストに含まれているものを歯磨きの時に取り込めているかが大切です。口を念入りにゆすいでしまうと、フッ化物も流れてしまうため全く効果がでません。ですから少ない水で1回ゆすぐのが良いと思います。この様なことを歯科医院で教えてもらうことも大事です。
つまり、むし歯の進行を止めることは歯科医院でクリーニングをすることだけではなく、セルフケアを含めたう蝕のマネージメントを歯科医院でしてもらうということがポイントです。

しかし、それは歯科医師からの一方的な情報提供だけでいけません。患者さん自身も自分の口の中を知り、何ができるか歯科医院で話合ってご自身で意思決定をしていく必要があります。そうすることによって、むし歯の進行が止まりむし歯の削る範囲を狭くすることなどのメリットに繋がるのです。むし歯の進行は意外とゆっくりなんです。

本来の予防型歯科医院とは

次に歯周病の話をします。歯周病はじっくりと時間を掛けて進行します。また歯を支えている骨までも減ってくる場合もあります。正面から見ると歯茎が腫れて、そこから骨が痩せてきます。
歯周病の治療はクリーニングを行います。歯周病においてクリーニングは必要条件ではあるが十分条件ではありません。クリーニングで治るのかというと、治らない場合もあります。そもそも歯周病というのは病原性細菌が、歯石・いびつなつめ物やかぶせ物・歯周ポケット・歯並びの凸凹にたまり、そこに、不十分な口腔衛生状態や口呼吸・歯ぎしり等が加わると歯周病が始まります。

また年齢、服薬状況、ストレス、遺伝要因、肥満、喫煙、飲酒によって重症化していきます。やはり口腔内だけにスポットを当てるのではなく、全身との関わりを考慮して治療計画を立てた方が良いと思います。ですから歯周病の治療を行う際、とりあえず歯石を取りましょうというのでは十分な治療計画と言えません。口腔内の状況、生活習慣、全身の状態などと歯周病の関係を説明をしてくれる歯科医師や歯科衛生士に出会えるといいですよね。多くの方は、歯科医師は削って詰めること、歯科衛生士はクリーニングをすることが仕事と思っているかも知れませんが、本来の歯科医師と歯科衛生士の仕事はきちんとむし歯・歯周病の治療計画を立てて口腔疾患のマネジメントをすることです。

ですから皆さんは、本来の歯科医院の仕事ができている歯科医院を選ばないと、その場凌ぎの削って詰めてクリーニングの繰り返しをすることになり、加齢とともに歯を喪失してしまいます。加齢とともに歯を失わない歯科医院のかかり方をして欲しいです。検査→初期治療・修復治療→メインテナンスの順番に受けていただきたいと思います。

  • 検査:現状把握・リスクチェック
  • 初期治療:クリーニング・リスクマネジメント
  • 修復治療:削る・詰める

上記3つを行い口腔の過去をリセットして、新しい口腔を手に入れてからメインテナンスをスタートすることが大事です。これらを行わずクリーニングだけを行うことはあまり効果的ではありません。
現在富士通さんのクラウドサービスで患者さんに口腔内データをお渡ししておりますが、意外と知られていないのが歯の総本数です。まずはこの様な情報からご自身の口腔内について興味を持っていただくことが、令和時代の予防歯科のスタートラインです。

クラウドサービスで、患者さんはご自分のスマートフォンやPCなどで診療情報を見ることができます。

「今からでも間に合う家族の予防歯科」晝間 康明先生

今からでも間に合う家族の予防歯科

晝間 康明先生(東京都立川市/OPひるま歯科 矯正歯科 院長)

予防型歯科医院の特徴はプライバシーに配慮した個室診療室で患者さんと向き合い、じっくりお話をしながら治療を進めて行くことが基本になります。世代的には特に20歳以下(アンダー20)の子どもたちの歯を健康に保つことが大切となります。予防型歯科医院にあって、私は矯正歯科医ですが、歯並びは顎の成長に大きな影響を与えますのでアンダー20を担当しております。

穴が開く前のむし歯を見抜くのがオーラルフィジシャン

永久歯は28本ですが乳歯は20本です。皆さんご存知でしょうか、2~3歳の時点で乳歯の下に永久歯がたくさん存在します。ですから乳歯を守ることが、永久歯を守ることにつながります。そのため子どもからの予防歯科が重要です。むし歯の原因は細菌で、目には見えませんが染め出し液を行うと確認できます。

以前に比べると子どもたちのむし歯が減っているとよく耳にします。実際に減って、昭和45年の学校歯科検診データでは子どもの95.4%がむし歯でしたが現在は35%まで下がっています。そう考えると現代では予防歯科はあまり重要ではないと思われるかもしれませんが、そうではありません。学校の検診では、う窩だけしか診ておらず、むし歯になる過程は評価していません。う窩のないお子さんでも当院で細かく口腔内のリスク検査を行うと、歯の内部ではむし歯が進んでいる状態が見つかります。結局、検診でむし歯がないと診断されても、むし歯になるまでのプロセス管理がきちんとできていないのが現状です。乳歯からむし歯があると永久歯も生えてくる途中でむし歯になってしまいます。そのためプロセスを管理していくことが非常に重要で、それが私たちオーラルフィジシャンの仕事です。

むし歯予防は感染と生活習慣の管理

むし歯というのは細菌の感染症です。その感染を止められなかったとしても、生活習慣を管理することで予防することが可能です。感染はどこから起きるのかというと、ほとんどが家族です。このお子さんの場合はお母さんのむし歯スコアが既に2の状態でした(最大3)。一度定着するとスコアは基本的に変化しません。ですから親御さんに感染ルートを知っていただくことが大切です。

さらに子どもたちの生活習慣を管理しながらメインテナンスをしていくことも大切です。日吉歯科診療所の熊谷崇先生が提案したMTMのプロセスですと、リスクからメインテナンスまでをトータルに管理できます。

MTM(メディカルトリートメントモデル)のプロセス

12歳児の全国平均のむし歯は1.7本ですが、日吉歯科診療所(山形県酒田市)のデータでは5歳以下からMTMを行った場合0.1本まで抑えられています。その環境を維持しメインテナンスを続けると20歳で1.1本となります。全国平均では6.7本ですので非常に少ないのが分かります。このデータは決して少ない人数ではありません。日吉歯科に通う1,475名で結果を出しています。そのためアンダー20でもメインテナンスを受けていただきたいと私たちは考えています。

20歳までの年齢別口腔育成ポイント

そこでメインテナンスを受けながら年齢ごとの目標設定・管理についてお話ししたいと思います。まず乳歯の生えはじめの時期は、母親からのむし歯菌の感染に注意することが最も大切です。

次に3歳を過ぎると乳歯がしっかりと生えてきます。ここでもまだむし歯菌の感染リスクはありますので、引き続き感染を防ぐことと、かみ合せ等をチェックしていきます。

そして6歳~11歳になると永久歯が生えはじめます。ここが大きなターニングポイントです。最も大事な第一大臼歯を守っていくことが重要です。この歯は食事の時に100kg~200kgの負荷がかかると言われています。またこの歯を失くすとお口全体の機能が低下します。やはり失う原因はむし歯・歯周病です。そこで私たちは歯ブラシ指導やフッ素の使い方を説明します。そして第一大臼歯が上下しっかり生えそろった上でかみ合せもコントロールしていきます。

永久歯が完成するのが12歳位です。女の子の場合、第二大臼歯が生えてくる頃には成長も安定し歯並びも大人とほぼ同じ形になります。そのため矯正治療を行い歯並びも改善できるタイミングです。14歳位になりますと成長も落ち付き全ての歯が生え揃いますので、咬合調整に加え、口腔内にはむし歯も歯周病もない状態をつくり、その後20歳までメインテナンスを継続していきます。そうしますと将来のむし歯リスクが低い状態で抑えられます。

幼児メインテナンスは家族と歯科医院が一体で

3歳の子のメインテナンスについて。子どもに歯科医院は怖いと思われてしまうとメインテナンスは継続できません。ですので、少しずつやることを増やしていくことでメインテナンスに繋がるようにしていきます。最初は器具の説明であったり、ユニットに座る練習をします。子どもたちにとってユニットに座ることは非常に勇気のいることです。歯医者さんは歯を削る所ではなく、歯を強くする所だよと伝えていきます。そして子どもたちにも勇気を持ってもらいます。個室型診療室ですと歯を削る音などが子どもたちに聞こえることもなく、不安にさせることもありません。

私の役割はメインテナンスの状況を歯科衛生士から報告を受け最終的な判断を行ったり、親御さんに説明をすることです。そして最終的には歯科医師が子どもたちが乗り越えてきたステップを認めてあげることが大切です。子どもたちが少しずつできることを増やしていく中で、今日できたことを褒めてあげます。そして次に乗り越えられる課題を設定し乗り越えた時に評価しまた褒めます。その繰り返しで歯を強くしていきます。

子どもたちに受診を促すことも大切ですが、子どもだけがメインテナンスを受けるのは無理が生じます。やはりメインテナンスは生活習慣の改善が大切です。そのため家族でメインテナンスを受けていただきたいと思います。私たちが目指すところは永久歯を天然の歯に近い状態で守っていくことです。そのためのステップとして最初は乳歯がむし歯0の状態をつくる。次に永久歯がむし歯0の状態をつくることで、この目標を達成できるのではないかと考えております。

「人生100年時代、身近な医療者マイハイジニストを持ちましょう」花岡 佑み子さん

人生100年時代、身近な医療者マイハイジニストを持ちましょう

花岡 佑み子さん(東京都西東京市/アップルデンタルセンター 歯科衛生士)

本日は、歯科衛生士の立場から各年代のメインテナンスやホームケアの重要性についてお話したいと思います。普段は完全個室の診療室で患者さんと1対1で診療を行っています。ユニットの目の前に大きなモニターがあります。ご自身のレントゲンや口腔内写真を写し意識してもらいながら説明を行います。担当患者を年代別でみると20代~30代の方が少なく40代以降の方が多いです。中でも60代が1番多いです。

世代別メンテナンスと歯科医院のできること

それでは、年代別に応じた目標等を説明していきます。まず1歳半の幼児の場合です。保護者の方はお子様をどのタイミングで歯科医院に連れて行けばいいのか分からないかと思いますが、歯が生えたタイミングで現状を診てもらうのが良いと思います。乳歯が萌出した頃から小学生以下までのお子様と保護者の方には、まず口腔内が細菌感染しない環境をご家庭と歯科医院が協力してつくっていきますというお話をします。そして歯科医院は「歯を削る所ではなく、歯を守りにいく場所」ということをお子様と保護者の方に繰り替し伝え、歯科医院へ通う気持ちを整えてもらいます。

次に小学校入学からの義務教育期間です。永久歯が生えてくる時期ですので一番むし歯になりやすい時期です。口腔内の管理をしっかりしなければならない年代ですが、小・中学生は習い事や塾、部活動などでスケジュールがいっぱいな子どもたちが大半です。なかなか歯科医院に来院するきっかけがないため、口腔内の管理が歯科医院では難しいため、大人と同じセルフケアができるように、歯磨きを習慣化させていきます。こうして生活の変化や乱れに負けないように健康な口腔を育てていきます。

大学生・社会人の方には一生自身の歯で生活するために、今からでもできることをメインテナンス時に説明します。早い方ですとこの時期に歯周病が発生しますので口腔内に隠れたリスクが無いかを検査して調べます。会場にいます富士通社員の方は、30代以降の方が多いようにお見受けします。この年代の方は、働き盛りのため歯のことを考えている暇がなかったり、お口のことで困っていないために歯科医院に行くきっかけが無いという方が多いと思います。今は困ったことがなくとも実は歯周病が静かに進行する年代です。この時期にケアや治療をきちんと行っていれば一生自身の歯で過ごせると思います。年に一回健康診断を受けているかとは思いますが、身体と同様に歯の事も考えて口腔の情報収集を心がけてください。

50代~60代になると過去に治療した箇所の不具合が出てきます。清潔な状態だと思っていても、かぶせ物を外して見ると、その中は汚れていて二次う蝕から抜歯というケースも珍しくありません。特にそういった治療歯が、ご自身に無いか歯科医院で確認していただく年代です。

70代~80代になりますと数多くの歯を失っている方も多いです。歯を失った方は入れ歯や差し歯の不具合から食事ができないことなどにお困りです。歯が残っている方はケアの仕方が分からないといったお悩みをお持ちの方が多い年代です。この年代の方には口の中をセルフケアとメインテナンスでとにかく清潔に保ち、口腔内の細菌が全身に広がらないよう感染を予防すること、入れ歯などの不具合を改善して口から栄養を取れる状態にすることが大切です。

健康な状態から要介護になる間の心身の活力が低下する時期をフレイル(虚弱)と言います。長寿社会の現在、現代人はフレイル期が長くなる傾向があると言われています。フレイル期の方は「社会性の衰え・身体の衰え・心の衰え」が顕著になってきます。このようなフレイル期の前兆はお口の中から、わかることが少なくありません。皆さんが70代になった時、身近な医療者としてかかりつけの歯科衛生士がいれば、人生100年時代の今、この先の人生が楽しく過ごせるはずです。それには健康な今から身近な医療者・マイハイジニストを探しておいてください。

ホームケアの新ルール

口腔の健康を維持するには、むし歯の罹りやすさと歯周病の進行度を認識してケアしていくことです。それには歯科医院でのケアだけでは不十分で、ホームケアが欠かせません。一見綺麗に見える歯でも、きちんと磨けていない場合があります。実は歯ブラシで除去できる汚れは60%程度なんです。歯間ブラシやフロスを使用しないと綺麗にならないと言われています。当院では個々の患者さんに合わせて歯間ブラシやフロスを選択させていただきます。ゴム製の歯間ブラシは食後、歯の間に詰まったものを除去するのに適しています。しかし歯の間の清掃には不向きです。ブラシタイプの方が清掃力は高いです。

実際に歯ブラシを行う順番について説明します。

  1. 歯間ケア
  2. 歯ブラシ
  3. 歯磨剤

の順で行っていただきたいと思います。まず歯間のケアを行うと汚れがたくさん取れますのでたくさんゆすいでください。その後、歯ブラシに歯磨き粉を付けて磨いてください。ゆすぎは1回がおすすめです。5~6回ゆすいでしまう方が多くいますが、それでは歯磨き粉に含まれるフッ素がすべて流されてしまいます。

次にホームケアの新ルールについて説明します。それは「2.2.2.2ルール」です。

  • 朝晩1日2回磨く
  • 歯磨き粉は歯ブラシに2センチ程付ける
    (口の中にフッ素を残していただきたいのでたっぷり使ってください)
  • ブラッシング時間は2
    (なぜなら歯ブラシ前に歯間ブラシやフロスで汚れを除去しているからです)
  • 歯磨き後は2時間飲食をしない
    (口の中にフッ素が残っているため飲み物やガム等で流さないようにしてください)

今の歯磨き粉は1回ゆすぎに対応しておりますのでご安心ください。早速本日から実践していただくとKEEP28を達成できるのではないかと思います。
皆さんは人生100年時代を生きておりますので「8028」ではなく「10028」を目指していただきたいと思います。そしてかかりつけの歯科衛生士を持ってメインテナンス、ホームケアを実践し歯を守っていただければ幸いです。

講演後の質疑応答の様子

質疑応答

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健康セミナー企画担当者に聞く

セミナー終了後に「令和時代の予防歯科」を企画・開催した富士通・健康支援室の保健師の方とヘルスケア事業本部の方に、本セミナーの企画趣旨、参加者の反応、今後の展開について聞いてみました。

参加者:
富士通株式会社健康支援室 下山様 堀内様 磯部様
富士通株式会社ヘルスケア事業本部 武久様 大浦様
CG(コミュニケーション・ギア) 伊藤

CG 伊藤(以下CG):
社員向け健康セミナーは定期的に開催されていると聞いています。歯科関連セミナーも開催されてきたそうですが、今までに開催されてきた健康セミナーの内容を教えてください。

富士通株式会社健康支援室 保健師(以下保健師):
健康セミナーは年間4~6回開催されています。歯科に関しても今回が初めてではなく、今までにも何回か開催してきました。昨年の例を挙げると、歯科・禁煙・ヨガ・ウォーキング・糖尿病・スキンケアなどのセミナーを開催してきました。

CG:
セミナーは健康増進のために、社員の方が日常生活レベルで取り組める内容が多いように思います。社員の方の健康啓発が目的でしょうか。

保健師:
はい、そうですね。社員の健康増進が目的で開催しているのはもちろんですが、健康支援室としては当年の健康セミナーを翌年の健康診断の結果に繋げることが具体的な目的です。健康診断の結果に基づいて、さらに社員の健康増進に役立つ情報を提供することを目的として開催しています。

CG:
今回、健康支援室がヘルスケア事業部と連携して歯科セミナーを開催したということは、どのような視点からでしょうか。社員の方の歯科への関心が高まっていることも関係があるのでしょうか。

保健師:
歯科セミナーは、2014年から蒲田の富士通ソリューショスクエアで、歯科健診会社の歯科衛生士を招き実施していました。就業後にも拘わらず参加者も多く、好評を博していましたので、社員には歯科への関心が根付きつつあると思っていました。

そんな中、ヘルスケア事業本部が予防歯科を推進する歯科医師の方とクラウドを通じての患者への情報提供、市民や企業社員への予防歯科の啓発活動を行っていることを知りました。また予防歯科のパイオニアである熊谷崇先生を招いて歯科予防セミナー(品川オフィス)を幹部社員向けに開催して、約300名の幹部社員が参加。このような背景があり、健康管理室の歯科セミナーの開催に当たり、ヘルスケア事業本部に相談したのがきっかけで、今回の予防歯科セミナーの開催に至りました。

CG:
今までの歯科セミナーと今回とでは、違うと感じたことはありましたか?

保健師:
今までの歯科セミナーでは、歯科健診会社の健診担当歯科衛生士によるホームケアの話が中心でしたが、今回は歯科医院の臨床現場で働いている歯科医師と歯科衛生士の方々が予防歯科医療の最前線をリアルに話してくれて社員は自分事として受けとめることができたのではないでしょうか。

CG:
健康セミナーの中でも歯科セミナーは好評とのことですが、今回は例年以上に参加者が多かったと聞いています。

保健師:
例年、歯科セミナーは参加者が多く、70名ぐらいの社員が参加していますが、今回の参加者は146名と非常に多くの社員が参加しました。参加者の内訳は会場参加が123名、ネット参加が23名でした。男女比は6:1で、社員男女比率から見ると女性の参加も多かったと思います。

CG:
参加者が多かったのは、ヘスルケア事業部と連携した成果ですね。

保健師:
それもありますが、健診業務を主とする歯科衛生士の話ではなく、予防歯科を推進する歯科医師が講師をするということが、今までになく新鮮だったのだと感じています。セミナータイトル「令和時代の予防歯科」がキャッチーな感じも良かったのだと思います(笑)。
それと女性の参加者が多かったのは、小児歯科の演題があったことから、子育て中の女性社員の関心が高かったのではないでしょうか。

CG:
多くの社員の方に参加してもらった結果、その反応はいかがでしたか。会場ではノートをとる中年男性社員の姿も目立ちましたが、セミナー参加者アンケートの結果を踏まえて教えてください。

保健師:
アンケートは自由記載にもかかわらず、今回は参加者の半数以上が書いてくれました。ここからも今回のセミナー内容への評価の高さが汲み取れます。参加者のエピソードを紹介しますと、話が凄く分かりやすかったようですが、衝撃的な口腔内の写真(各講師のセミナーダイジェスト参照)に驚きもあったようです。それだけに歯科医院へ予防のために行く必要を感じた方も多かったようです。

今まで通院していた歯科医院では、口腔内を部分的にレントゲン撮影して多くの画像を規則的に並べたものを見たことはないし、様々な検査もしないため記録も少なかった。だから患者本位の説得力のある説明ができなかったのではないか、という疑問の声もありました。また歯科衛生士の花岡さんは、知識も豊富で事例に即した話ができて、社員が抱いていた歯科衛生士像を変えた様です。

CG:
歯科医院への疑問もあったようですが。

保健師:
そういうことになりますが、それ以上に社員の皆さんは予防歯科への期待感が高いようです。
「何歳になってもメンテナンスを受ければ健康寿命は延びると思う。食事を楽しむことが健康に繋がっていく。そのためにも歯は大事。」
「セミナー講師の先生は予知性のある治療が大切だと言っている。患者に対して何歳以降の治療はあまり効果的でなくなると明示できるのは素晴らしい。」
「体力が落ちてから治療をしたところで無駄になること。予防重視の歯科医院は場当たり的な治療はしないことがわかった」
といった感想も寄せられています。

CG:
総じて今までの歯科健康セミナーに比べて、より身近で真剣に聴ける内容だったと感じている社員の方が多かったようです。最後にヘルスケア事業本部の方のご意見を聞かせてください。

富士通株式会社ヘルスケア事業本部:
社会ではこれだけ健康経営が叫ばれているにも関わらず、まだまだ予防歯科の認知や、予防歯科の本質について、社員の理解が進んでいないと感じています。単に治療説明が判りやすいとか、子ども受けするアメニティーが整っている医院だけが必ずしも良い訳ではありません。先進国の医療機関ではそんなことは当然なことで、医療機関選択のアドバンテージではないでしょう。

そんな便利さで選ぶのではなく、「歯1本1本の役割・価値について正しく教えてくれる歯科医院の存在」について、社員や社会に広く知ってもらいたいと考えています。つまり、「1歯」を「1子」として扱い、私たちにも指導してくれたり、ホームケアを頑張っていたら正当な評価してくれたりする、生涯に渡ってのヘルスケアの伴走者が本質的な予防歯科医院です。

そんな歯科医院に社員・家族が通うような仕組み作りのお手伝いも、健康管理室の皆さんと連携しながら手がけて行きたいと思っています。そんな医院に行けば、自分の歯科医療情報は当然の如くクラウドで頂ける。これこそが21世紀の歯科医院のありたい・あるべき姿ですよね?!

後日談:
本年12月に「令和時代の予防歯科」の第2弾が富士通品川オフィスで開催されることが決定したそうです。

(文責・CG伊藤)