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【6/11開催】クラウドサービス説明会レポート

クラウド説明会について

予防歯科の価値を追求しよう

去る6月11日、東京蒲田の富士通ソリューションスクエアにて富士通クラウドサービスの説明会を開催しました。歯科40医院からは99名、富士通、湖池屋、全日空商事の企業からは約20名の総勢約120名にご参加いただきました。本説明会は、単なる商品説明会に留まらず、予防歯科の価値を追求してどのように社会に広めていくかのアプローチを歯科と企業で考える会の様相も呈した内容でした。

第1部 クラウド概要説明

富士通株式会社 武久文之 様

企業人の立場から予防歯科を支援

武久さんは、富士通社の社員としてクラウドサービスの価値を歯科に伝える一方で、予防歯科を支援する企業のアライアンス活動に注力しています。
また、予防型歯科医院からの診療情報の蓄積・分析からリスクアセスメントデータの構築まで視野に入れて、予防型歯科医院と富士通社SEの橋渡し役を担っています。予防型歯科医院と企業の連携のキーマンと言える存在です。

Point

  • 富士通社のヘルスケア事業分野と未来医療ビジネスセンターの取り組み
  • 歯科クラウドサービスとその提供されるファシリティー基準
  • クラウドサービスの仕組みと日吉歯科の事例紹介
  • 「歯の健康ファイル」テンプレート(エクセルマクロ版)の提供(New)
  • サンスター社との連携によるホームケア情報の受信(New)
  • 予防歯科支援企業アライアンスとベネフィット・ワン社との連携
  • クラウドサービスを提供する歯科医院の今後のスケジュールと展開

アップルデンタルセンター 畑慎太郎 先生

クラウドの先にあるもの

畑先生には何度となくクラウド説明会には登壇していただいていますが、その都度スライドの内容がブラッシュアップされていきます。今回、病み上がりということで、いくぶんスリムになった畑先生でしたが、いつものウイットに富んだ話し振りで、クラウドサービスの表面的なメリットに留まらず、社会と予防歯科の未来の在り方まで言及していました。

クラウドサービス利用の一時的なメリットとして、診療プロセスの中での様々な診療情報提供ができ、患者がいつでも取りに行けて安全に保管できることを挙げ、自院での具体的な利活用・サービス提供の周知の仕方などについて話されました。そして現段階での利用目的として、

  1. 治療の質の担保
  2. 初期治療とメインテナンスの質の担保
  3. 自分ゴト(患者さんが)として捉えセルフケアの質の担保

といった歯科診療全般を良質化するインフラとしてクラウドサービスの有効性を挙げ、その一方でデータ保管の経済性、一家族で複数データを持つ不便さ、登録・入力の煩雑さを指摘していました。

後半では、クラウドサービス活用の先にあるものとして、良質なデータを紡ぐことによる医療費の抑制、健康寿命といった社会課題の解決に貢献する可能性があり、歯科界だけでなく企業や一般生活者を巻き込んで8028を目指すことができると結んでいました。

株式会社湖池屋 青島健二 様

はじまりは「カンブリア宮殿」

企業事例として株式会社湖池屋の青島さんにご登壇いただきました。予防歯科とスナック菓子メーカーの組合せを意外に感じられる向きもあると思いますが、「健康」「社会貢献」というコアバリューを持つ湖池屋は、その点で予防歯科と同じベクトルで連携するパートナーとして十分な価値を持つ企業といえます。

湖池屋の予防歯科への参入のきっかけとなったTV東京「カンブリア宮殿」に出演された日吉歯科診療所・熊谷崇先生の存在から始まり、歯科メインテナンス費用補助の福利厚生制度導入に至るまでの過程の話は興味深いものでした。さらに、「乳酸菌LS1」のプラークコントロールの臨床試験結果について説明に続き、自社広報誌「乳酸菌PRESS」でのスポーツを通じて予防歯科を普及する取り組みは、予防型歯科医院に新たな視点を示しています。「乳酸菌PRESS」の中では、クラウドサービスを活用する予防型歯科医院を自社製品消費者と学生スポーツ関係者に紹介していただいています。

第2部 クラウド利用事例紹介

日吉歯科診療所 理事長 熊谷崇 先生

8028を達成するには

最近の熊谷崇先生は歯科界の枠を超え、他業種とのトップ会談で予防歯科の価値を伝えるスポークスマン的な役割を果たしています。その結果、従来の歯科では同じ土俵に上がることが考えられない大企業と連携して社会貢献する端緒をつけてくれました。毎回、クラウドサービス説明会にもボランティアとして参加してくださり、予防歯科を志す後進への道筋を示していただいています。

今回は、歯科医療にイノベーションを起こさなければ8028を実現することはできない。イノベーションを起こすには、メディカルトリートメントモデルを基盤として、専門医と一般医の連携による科学的根拠に基づいた治療の実践、SPTとメインテナンスの提供といった一連の流れを確立して、クラウドサービスにより患者と医療者が情報共有する必要があると説明されていました。

日吉歯科診療所 前田奈美 様(歯科衛生士)

医院独自のアドバイスファイルの作成

熊谷先生に続き、クラウドサービスを先行して活用している日吉歯科診療所 歯科衛生士の前田さんからクラウドサービスの取り組みの報告がありました。 富士通クラウドサービスの特徴として、

  1. 院内で統一した診療資料が作成できる
  2. ファイルの作成がシンプルなため資料作成時間の短縮が可能
  3. ファイルアップロードが簡単な上に、患者登録時に確認画面が出るため誤登録を防げる
  4. VPN回線を使用するため個人情報の流失リスクが低い

ことを挙げていました。続いて、現状の日吉歯科診療所でのクラウドサービス活用状況と利用する患者さんの感想をご紹介いただきました。そしてその中で特筆すべきことして、クラウドサービスで提供する資料の説明としてイラストを使用した医院独自のアドバイスファイルは他の医院に非常に参考になるものでした。

あすなろ・デンタルケア 金谷宏樹 先生

医院環境に左右されないクラウド需要

4月よりクラウドサービスを導入した医院からは、クラウドサービス利用の大変さを指摘されることも少なくありません。そのような状況で、導入済の歯科医院の中で日吉歯科診療所に次ぐ利用頻度だったことが、金谷先生に登壇していただいた理由の1つです。

あすなろ・デンタルケアは埼玉県三郷市の小規模商業施設に所在し、都心20㎞圏内の人口増加地域ではあるものの、住民の経済力と健康感は取り立てて高い地域ではないと金谷先生から説明がありました。そのような環境の中で、予防歯科を標榜してクラウドサービスを患者にどのように提供しているのか興味深いものがありましたが、クラウドサービスの周知と定着は、段取りや準備の周到さ、院長と歯科医衛生士の熱量の高さによってなしえた感がありました。

クラウドサービスの導入によって、

  1. 今まで予防歯科のことを知り合いに説明しても、なかなか理解されませんでした。しかし、スマートフォンで診療情報を見せると一目瞭然で理解してもらえるようになった。(患者さんの声)
  2. 紙媒体で診療情報を渡しても、ほとんどの患者さんは見返してもらえることはなく、医療従事者も診療情報を儀式的に提供する傾向があったが、クラウドサービスを導入して健康への意識が患者、医療従事者ともに高くなった。(スタッフの声)

このような嬉しいエピソードを金谷先生が披露してくれました。

あすなろ・デンタルケア 村上明菜 様(歯科衛生士)

新人も使いこなすクラウドサービス

就職したばかりの村上さんは、PCが得意という理由から鶴の一声でクラウドサービスの担当者に任命されたそうです。村上さんも先行事例として日吉歯科診療所やアップルデンタルセンターから学び、同様の準備・周知活動、そして院内研修を実施しました。その中で特筆すべきは、スタッフの誰もがわかるように、資料作成の手順や操作時に必要なパスワードがファイリングされたマニュアルを作成したことです。また、自院広報誌「あすなろ通信」による周知活動と歯科衛生士と歯科助手のクラウドサービスにおける業務の棲み分けの明確さも印象に残りました。キャリアの浅いスタッフが責任者としてクラウドサービスを活用していることに鑑みると、まだまだ多くの歯科医院がこのサービスを利用できるように思います。

アップルデンタルセンター 花岡佑み子 様(歯科衛生士)

クラウド導入までの3STEP

花岡さんはクラウドサービスを導入する際の院内での取り組み方を時系列に並べて説明され、計画性と共に事を始めるに当たっての院長のリーダーシップと組織の意識統一の大切さを改めて認識させられました。

  1. 【院内での価値共有】
    アップルデンタルセンターでは歯科医療従事者と生活者(患者)の情報の溝を埋めるため、患者と価値を共有する道具としてクラウドサービスを位置づけ
  2. 【準備と構築】
    ポスター、説明資料、同意書など患者への周知材の作成、アップロードのひな形の構成、VPNの設定などの構築を行い
  3. 【シミュレーション】
    スタッフ間の役割と運用方法の徹底する

といった3ステップの実践は、今後クラウドサービスを導入する医院にとって非常に参考になる内容でした。

日吉歯科診療所同様、患者へ診療資料を提供する際も、単に画像などの診療情報を渡すのではなく、画像の見方やグラフの理解の仕方などの説明資料を作成していました。そして、自院でのクラウドサービスの患者満足度調査の結果も明らかにしており、これらは今後クラウドサービスを利用する医院への確証になったのではないでしょうか。