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【2021.6.24 開催】予防歯科Live・オンラインセミナー【講演ダイジェスト】


セミナー情報

日時

  • 6月24日(木)

開催形式

  • オンラインセミナー(富士通株式会社 汐留オフィスより配信)

式次第

  1. ご挨拶
    【松野英幸 先生(M,デンタルクリニック松野歯科)】

  2. 予防歯科に対する富士通の取り組み
    【富士通Japan株式会社】

  3. 富士通予防歯科クラウドサービスのご説明
    【富士通Japan株式会社】

  4. 真似できない予防歯科医院を作ろう ~予防歯科におけるクラウドシステムの活用について~

  5. 【宮城和彦先生、宮野沙織里様(みやぎ歯科室 静岡県浜松市開業)】

講演ダイジェスト

ご挨拶

松野英幸 先生(M,デンタルクリニック松野歯科 院長)

 長年に亘り歯科の世界では、生活者に対して一方的な情報提供が行われてきました。これを双方向の関係性に変えたのが「富士通予防歯科クラウドサービス(以下クラウドサービス)」です。つまり生活者との情報格差を埋めることにより、歯科医療の受診の在り方を変えるためのツールなのです。

 情報を共有することで、生活者の意識や理解度、歯科のリテラシーをも向上させることが期待できます。同時に医院の透明性も担保されるため、信頼関係の構築にも大きく貢献してくれます。実際に利用されているOP(オーラルフィジシャン)医院の感想でも、「メインテナンスを提供する要因になった。」「健康維持のサポートや提案がしやすくなった。」等、クラウドサービスの有用性を裏付けるものが多いです。

 また私達OP医院と富士通社との関係はクラウドサービスだけに留まりません。ご存知の方も多いと思いますが、よりスケールアップしています。その一つに富士通グループ社員の歯科検診の受入れ先として、OP医院にご支援を募っています。言わば「“生活者自身”が“生活者”による“生活者”のための新しい健康維持・増進」を図っていただける様な新しい仕組みづくりに取り組んでいます。将来的には日本全国でこの様な歯科医療のかかり方の標準化を目指していますが、まずは富士通社がその先がけとなっていただいている訳です。決してクラウドサービスの利便性や検診による経済的恩恵で共同している訳ではございません。

 かつて皆さんがOP医院へと転換を図った際、多くの困難を乗り越えてこられたかと思います。同じく富士通社もクラウドサービスの開発に始まり、富士通健保組合と連携し歯科検診制度を立ち上げるまでに多くのご苦労をいただいております。“それぞれ”が“それぞれ”の物語を共有し、いずれもが自らの理念に沿った生き方を選択している訳です。長期的な視野を持って社会に貢献しようとする者同士が手を組み、社会の改革を進めようとしているのがクラウドサービスの実態です。決して情報共有だけが目的ではございません。

 この共通する理念と経験から生まれる社会的イノベーションがもたらす未来には、日本全国に健康維持を目的とした歯科医院に通う文化が根付いているはずです。それを実現し可能にするのが我々OP医院です。熊谷崇先生(日吉歯科診療所:山形県酒田市)がつくってくださった歯科医療の歴史にぜひ皆さんもご参加ください。今後クラウドサービスはOP医院にとって口腔内写真、サリバテスト、OHISと同じく標準的なシステムになって参ります、未導入の方はこの機会にご検討いただけましたら幸いです。


予防歯科に対する富士通の取り組み

乗次様(富士通Japan株式会社ヘルスケア事業本部)

【富士通グループ全社員向け予防歯科セミナーを実施】

 去る4/22(木)、弊社健康推進本部が主催となり、「富士通グループ全社員向け予防歯科セミナー「第3回 令和時代の予防歯科」を実施いたしました。なんと約3000名以上の申込みがあり(参加率95%)過去最大規模の社内セミナーとなりました。他の啓蒙セミナーと比較しても圧倒的に高い数字であり、弊社社員の予防歯科に対する関心の高さが伺えます。
 またセミナー後のアンケートでは約半数の方に回答をいただきました。その中の問いに『歯科医院からの情報の提供を希望する』に対して、約90%が希望すると回答いたしました。
 特に予防歯科医院をどのように探せばいいのか?というお声を非常に多くいただいています。全国で82,000人いる社員が“今”予防歯科医院を探そうとしています。ぜひOP医院の皆さんにご支援いただき「弊社社員の歯科検診の受け入れ」及び、「クラウドサービス」のご利用、口腔内情報の提供についてもご協力いただきたいと思っております。

【クラウドサービスの概要】

 本サービスは予防歯科医院と患者様をつなぐためのコミュニケーションツールです。通院される患者様の口腔内写真、レントゲン写真等に衛生士さんのコメントを添えて「医院PC・タブレット端末」から「患者様の端末」に届く仕組みになっています。そのため患者様は時間や場所に関係なく、いつでもご自身の口腔内情報(過去の履歴含め)を確認することができます。

【機能紹介】

主な機能は以下の2点です。

1.)診査結果報告書(詳細はコチラ)
患者目線・生活者目線のフォーマットで直観的でわかりやすい口腔情報の提供。
  • 目的
    -患者様の歯の本数など口腔内の情報をシンプルで分かりやすく伝えることで口腔状況への意識向上を狙う。
  • 機能
    -初診時からメインテナンス期以降の口腔状況をデータ蓄積し可視化する。
  • ポイント
    -患者様にとって最も馴染みのある数字をビジュアル化!
    -簡単に素早く作成できるので、診療中にもご活用いただけます!

2.)歯の健康ファイル(詳細はコチラ)
口腔内の状況をデータ化し、患者と共有することで歯科リテラシーを高め、継続的なメインテナンスへとつなげる。
  • 目的
    -データを共有することで口腔状況への理解を深める。
  • 機能
    -写真、レントゲン、各種資料やコメント入力を行い患者に提供する。
  • ポイント
    -より質の高いコミュニケーション、患者教育が実施できる。
    -その日の内容を患者が振り返ることができる。

真似できない予防歯科医院を作ろう
~予防歯科におけるクラウドシステムの活用について~

宮城和彦 先生(みやぎ歯科室 院長)

【お金では買えない価値を提供する】

 世間には予防歯科を掲げている歯科医院がたくさんあります。ただし玉石混交の状態で存在しており、生活者目線ではどこが良い歯科医院なのかはわかりません。
 そこでホームページの検索順位、SNS、口コミサイト等を参考にされる方も多いでしょう。しかしこれらはお金で解決できてしまうのです。歯科医院がお金さえ払えば生活者の目につき易くすることができます。一方でクラウドサービスに関して言えばお金では解決することができません。なぜなら患者さんに提供する資料は歯科医院で作成する必要があり、その資料とは「歯科医療者が診療を行ってきた結果であり、偽りのない事実」だからです。
 印刷で十分だと言う方もいらっしゃいますが、口腔内・レントゲン写真等は拡大すればする程その差は歴然です。例えば自分の診療がちせつだった場合、印刷では分からずとも、電子データではそれも患者さんに伝わってしまいます。クラウドサービスを利用するということは、良くも悪くも情報が筒抜けになるのです。

【真似できない価値を提供する】

 他医院での治療結果に疑問を感じて、当院に来院された患者さんがいました。早速レントゲンを撮影すると、そこにはずさんな治療結果が写っていました。当然ながらこのような歯科医院はクラウドサービスを利用できないでしょう。それは悪い情報も一目瞭然になるからです。つまり情報をオープンにするためには「質の高い歯科医療」が必要なのです。
 われわれOP医院の様に予防歯科をきちんと行い、クラウドサービスで情報を提供することが、歯科医療の価値向上に繋がると信じています。これは名ばかりの予防歯科医院には絶対に真似できません。


クラウドサービスの運用について

宮野沙織里 様(みやぎ歯科室 歯科衛生士)

【資料提供のタイミング】

 富士通の乗次さんの説明通り、クラウドサービスには主に2つの機能があります。当院ではこの「歯の健康ファイル」と「診査結果報告書」について、以下のタイミングで患者さんにお送りします。また患者さんに対する説明は「歯の健康ファイル」をもとに行っており、後で患者さんが一人で見ても理解できるような資料作成を心がけております。 ・歯の健康ファイル
患者教育時、覚えていただきたいこと、お伝えしたい事項がある時に送信。
・診査結果報告書
歯周精密検査、PCR検査(染め出し)結果を送信。

【院内での運用ルール】

どの患者さんにどの資料を送信したか、患者さんごとに表を作成しカルテに挟んでいます。これにより歯科医師、歯科衛生士、アシスタント全員で情報を共有しています。

上の3つの項目は同日に行うようにしています。本来患者さんの利用登録は患者さんの端末(スマホ・PC等)からご自分で登録していただくのですが、登録用のメールが届かない、メールを確認してもらえなかったことが多々あり、クラウド利用希望者にはその場で登録していただくことにしました。データ作成を分業化することにより、トリプルチェック体制、業務負担の軽減を実現しました。

【患者情報の管理・作成について】

 当院はDentalXRシステムで患者情報を管理しています。データ作成はiPadで行っており、富士通デザイン社が製作した、患者データ作成用「歯の健康ファイルクラウドテンプレート」を当院用にアレンジしたマスタースライドを使用しております。
 基本的にはマスタースライドにコメントを書いたり、画像を貼りつけたりするだけですので作成自体は容易になっています。

<作成イメージ>


【当院のクラウド活用状況】

・利用者数
約3ヶ月間で95人にご案内(2021/3/1~2021/6/15)
-希望する:72人
-希望しない:23人

・年齢構成
20代~50代が多く、60代でその半数となり、70代以降はほぼ利用者がいない。利用しない理由とは・・・
-ガラケーを利用している。
-スマホだが通話以外の操作方法が分からない。

・クラウドデータの閲覧状況(未読/既読)
<歯の健康ファイル>
合計54/86人(未読率39.5%)
-初診検査:24/45
-初期治療1:6/7
-初期治療2:9/8
-再評価1:3/5
-再評価2:12/21

<診査結果報告書>
合計39/61人(未読率39.0%)
-初診検査:23/37
-再評価1:2/6
-再評価2:12/16
-メインテナンス2/2


【運用後にわかったこと】
  • クラウドサービスを勧めた際に行うのは7~8割程度。
  • 60歳以上の参加者は5割程度。70歳以上になると極端に下がる。
  • 送った資料の開封率は6割程度。
  • 初期治療時の資料が読まれにくい傾向にある。


【運用するうえで心がけていること】
  • 情報はシンプルになるべく迅速に
    -患者さんの記憶に残る様に、文章は少なくして、重要なポイントだけを記載する。
    -来院当日に資料を送ることで、その日の復習をしていただきたい。


【サービス導入前の不安】
  • データ作成がたいへんではないか?
    →マスタースライドを用意し作成内容を決めたため、それほど大変ではない。
  • 作成時間はどれくらい要するのか?
    →1工程2~3分。トータルで平均10分くらい。
  • メールで利用者登録してくれるか?気付かないのでは?
    →気付かない人もいる。予約時間を多めに確保し、その場で登録するようにした。
  • どのくらいの人が自分の口腔内に関心を持ってくれるか?
    →未解決(患者の声 後述)


【サービス導入後の困ったこと】
  • メールアドレスの写し間違い。(oと0、大文字小文字、-と_など)
    →QRコード式の開発に期待。
  • データ未送信、未完成データの誤送信。
    →チェック表を作成し対応。
  • システムが不安定。落ちたり接続できなかったり。
    →全てのiPad、PCで作業できる環境について模索中。


【患者さんの声】
  • 今まで自分の歯をスマートフォンで見ることがなかったため、このようなサービスがあることに驚いた。
  • 自分の口腔内を見て過去に治療した詰め物が変色していたので、やり直したい。もっときれいにしたいのからホワイトニングもしたい。
  • データを見せてもらえると安心するし、ありがたい。
  • どこを治療したのかが分かる。

クラウドサービスによって患者さんの意識に変化が起こり口腔内を「自分ごと」として捉えてくれるようになった。また情報をオープンにすることによりさらなる信頼関係の構築も期待できる。



【自分たちへの効果】
  • いい加減な仕事をしていないということを証明できる。
  • 手を抜けない。

口腔内写真やレントゲン写真を提供し情報を開示することになるため、しっかりしたものを撮影しなくてはならない。また患者さん自身が治療前後の写真を比較して見れるようになるため、より責任感を持って仕事に取り組める。



【最後に】

 新しいシステムの導入は大変なこともありますが、患者さんと歯科医院の双方にメリットがあるサービスだと思います。今回紹介した活用事例・利用状況については、あくまでも当院の一例です。正解はございませんので、各医院それぞれの診療スタイルで上手く活用していただければと思っております。


これからのこと

宮城和彦 先生(みやぎ歯科室 院長)

【結果を残せる予防歯科】

 西真紀子先生が寄稿した記事(予防歯科で達成すべきアウトカム:クインテッセンス2021年6月号)をご紹介します。その中で西先生は『成人患者において長期メインテナンスで1人あたり平均喪失歯数が1本』という数値を提示したいと記述されています。引用データとして『アクセルソン博士の30年間』、『日吉歯科診療所の15年以上における結果』を提示されています。
 アクセルソン博士の冒頭6年間はコントロール群とメインテナンス群がありました。両者を比較するとメインテナンス群のう蝕の発生状況、歯周炎の発生状況は明らかに低くなっています。これらのことから、OPとして予防歯科を実践するからには、きちんと結果にこだわることが重要だと思います。

【オーラルフィジシャン=結果を残せる予防歯科】
  • 平均喪失歯数
  • う蝕発生状況
  • 歯周炎発生状況

これらを減少・抑制させる。

 クラウドサービスを上手に利用することで、より価値の高い予防歯科が提供できると思います。さらにOP医院同士が連携することで質の高い予防歯科が日本全国へと拡がるのではないでしょうか。その先の理想として「OP⇔OP、OP⇔患者」を繋ぐネットワークが構築できたら素晴らしいと思います。

【OPEN DENTISTRY】

 今後の目標は患者さんの帰宅途中にその日の診療内容を届けたいと思っています。「スマホで手軽に確認できる=安心」を提供したいのと同時に、患者さんにとって「届きやすい・使いやすい」というサービスを追求したいと思っています。また治療データについては質を担保できる様、必ずその前後の写真を提供するようにしています。私はこのことを「OPEN DENTISTRY」と呼んでいます。
 一般的に医療は情報が閉鎖されている分野であり、患者さんと医療者の間には少なからず隔たりがあります。1963年、東京大学名誉教授である冲中重雄氏(内科学者)は最後の講義で『私の誤診率は14.3%です』と語り周囲に衝撃を与えました。しかし、その衝撃というのは、医療者と生活者で全く逆のものでした。その数字は医療者から見るととても低く、生活者から見るととても高いものと捉えられたのです。医療は生体を扱う難しい分野のため必ずミスが起こるものだと思います。ただミスも含めて全体情報を公表するということに私は意味があると考えています。

【歯科医療人として】

 熊谷崇先生は本の中で『昔は、写真代だけで、ひと月30万円かかったんです。写真屋に払った総額で、土地を買えると思う。でも、一度もやめようとは思いませんでしたよ。予防歯科において、写真の価値は、土地よりもはるかに高いと信じていたから。お金には、代えられないのです。』と仰っています。
 現在はデジカメの普及によりフィルム代や写真を保管するスペースは必要ありません。そのため多くの歯科医師が写真撮影を取り入れています。ただ40年前のその環境の中で、規格性の高い写真を継続して撮るということを実践できる歯科医師がどれだけいたのでしょうか。
 私の好きな言葉にピーター・ティール(PayPal創業者)の『賛成する人がいない、大切な真実とはなにか。』という言葉があります。40年前の歯科界においてそれに該当するものは、口腔内写真をきちんと記録しておくことだったと思います。コストがもの凄くかかるうえ、すぐに利益には結び付きませんが、熊谷崇先生は正しいと思ったからやり続けてきたわけです。
 先述の通り、現代では口腔内写真は撮影しやすい環境が整っているため、多くの歯科医師が実践しています。そのため今は「賛成する人がいる、真実」になりました。では現代の歯科界でピーター・ティールの言葉に該当するものは何か?と考えますと、私はクラウドサービスではないかと思っています。医療業界は閉鎖的ですので、今後は情報をオープンにするということ自体が力を持ってくるのはではないでしょうか。
 引き続き富士通社には私達と一緒にがんばっていただきたいと思っております。歯科医療者が歯科界を良くしようと思っても、やはりテクノロジーの部分で限界があります。今後も社会問題の解決に向けて、一緒に汗を流すパートナーであってほしいと願っています。

引用)竹田晋也,歯を守れ!予防歯科に命を懸けた男 日吉歯科診療所・熊谷崇の挑戦,牧野出版

【最後に】

 現在、私は38歳であり、熊谷崇先生が酒田市で開業した年齢と同い年です。今後の歯科医師人生も永く何が正解かは分かりませんが、自分なりに正しいことを考え、その道を歩んでいきたいと思っております。この様な歯科医師としての生き方を教えてくれた熊谷崇先生、和久田一成先生(わくだ歯科 静岡県浜松市開業)には感謝しております。そしてOP医院の皆様とは、ぜひより良い社会を目指して、予防歯科を広める仲間として一緒にがんばっていきたいと思っております。
本日はどうもありがとうございました。