歯が悪くなってから通うのではなく、定期的に検診とクリーニング(PMTC)のために歯科医院に行くことが、日本でもだんだんと定着してきています。「メインテナンス」や「予防歯科」と呼ばれているものです。これには、患者教育(またはアドバイス、インストラクション、カウンセリングなど)が含まれることもあります。

メインテナンスの間隔はどのくらいが適切でしょうか? 半年に1回? 3ヶ月に1回? または1年に1回? その答えは一律ではなく、「むし歯と歯周病を発症または再発させない」間隔です。

その間隔は人によって違ってきます。また同じ人でもそのときどきによって違ってきます。なぜなら、むし歯も歯周病も、なりやすさ(リスク)は人それそれで、同じ人でもリスクが変わるからです。メインテナンスの間隔は、長過ぎてはいけませんが、かといって短過ぎるのも時間とお金の無駄です。その患者さんにとってちょうどよい加減をどこに取るのか、歯科医師の腕の見せ所です。

欧米では伝統的にメインテナンス間隔は一律に半年に1回が標準でした。しかし、その根拠は、実は歯磨きペーストのメーカーのラジオコマーシャルで「半年に一度、歯医者に行こう!」と言っていたことが始まりではないかというくらい怪しく、疑問が投げかけられています。最近の英国の研究では、歯科医師が間隔を2年空けても大丈夫だと判断した患者さんならばメインテナンスを2年に1回まで延ばしてよいようです[1]。スウェーデンの新しいガイドラインではリスクが低ければ3年に1回まで延ばせるとのことです[2]。

半年に1回だったのが、3年に1回でもよいのなら、時間もお金も1/6で済みます。ところが、日本ではリスクに基づいてメインテナンス間隔を空けるというコンセプトがあまり根付いておらず、国民健康保険で安く済むことと、衛生観念が強い国民性が相まって、できるだけ短い間隔でメインテナンスを行おうという、現在の欧米とは反対の力が働きがちです。中には1ヶ月に1回も足繁く通う患者さんもいるほどです。

PMTCの歴史を紐解くと、スウェーデンでPMTCが研究され始めた1970年代には、2週間に1回のメインテナンスを行いました[3]。それで十分にむし歯と歯周病が予防できるということで、間隔は延びていきました。もし、1ヶ月に1回通っていると欧米の人に言うと驚かれるでしょう。

一つ注意してほしいのは、メインテナンスの目的は「定期的に歯科医院に通うこと」ではなく、「歯を健康に保つこと」です。究極の目標は、「KEEP 28」( 歯が生えそろってから一生を終えるまで一本も歯を失わないこと、現在の年齢から歯を失うことなく生涯自分の歯で生活すること)の達成です。メインテナンスで行っている定期検診、PMTC、患者教育は、むし歯と歯周病の原因を除去する、またはリスクを軽減するという処置に他なりません。よって、メインテナンス中に新しいむし歯や歯周病ができるようなら、根本的な見直しが必要です。


写真説明

2006年のスウェーデンで撮ったメインテナンス用の歯科診療室。
個室で感染対策が十分に行われ、プライバシーも守られています。


References


  1. Clarkson JE, Pitts NB, Fee PA, Goulao B, Boyers D, Ramsay CR, et al. Examining the effectiveness of different dental recall strategies on maintenance of optimum oral health: the INTERVAL dental recalls randomised controlled trial. Br Dent J. 2021;230(4):236-243. Epub 2021/02/28.

  2. Socialstyrelsen. National guidelines for dental care: Summary 2022 [cited 2022 April 7]. Available from: https://www.socialstyrelsen.se/globalassets/sharepoint-dokument/artikelkatalog/nationella-riktlinjer/2022-1-7749.pdf.

  3. Axelsson P, Lindhe J. Effect of fluoride on gingivitis and dental caries in a preventive program based on plaque control. Community Dent Oral Epidemiol. 1975;3(4):156-160.

著者プロフィール

Makiko NISHI

西 真紀子 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長

1996年 大阪大学歯学部卒業
     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
2001年 山形県酒田市 日吉歯科診療所勤務
2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修士課程修了
Master of Dental Public Health (MDPH)取得
2010年 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長
2018年 同大学院博士課程修了 
   Doctor of Philosophy(PhD)取得