皆さんは毎日歯磨きしていますか? 95%の日本人が毎日歯を磨き、一日2回以上歯を磨く人は77%らしいです[1]。一方、ヨーロッパの小国アイルランドでは24%が毎日は歯を磨かず、一週間に一日は飛ばしているとのこと[2]。日本人がきれい好きなことがよくわかります。事実、日本の街中のポイ捨てゴミの少ないこと!

ところで歯磨きはなぜするのか、それはむし歯と歯周病を予防するためです。この2つの病気は歯を失う原因のほとんどを占めますので、歯を失いたくなかったら、歯磨きをしなければなりません。しかし、いくらきれい好きで毎日歯磨きをしたからといって必ずむし歯と歯周病を予防できるわけではなく、科学的な方法で行うことが肝心です。

まず、むし歯予防。実は、歯磨き自体にむし歯に対する予防効果があるということは証明されていません[3]。これを聞いて意外に思われる方がたくさんいるでしょう。今まで「むし歯予防に歯を磨こう」と耳にタコができるほど言われ続けてきていますから。

しかし、よく考えてみると、むし歯の始まりは奥歯の噛み合わせの溝の小さな隙間や、歯と歯の間から始まります。ミクロン単位の隙間なので、どんなに細い歯ブラシの毛先でも届きません。磨いても磨いても、そういう場所は「バイオフィルム」(従来から「歯垢」や「プラーク」と呼ばれている白いネバネバした細菌の塊)がいつも溜まっている状態なのです。

それでもなお、むし歯予防に歯磨きをしてほしい理由があります。それはフッ素が入った歯磨剤がとても強力な効果を持っているからです。むし歯予防に関しては発想を変えて、歯ブラシはフッ素を歯に運ぶ道具だと考えてください。そしてなるべくフッ素を口の中に留める工夫をしてください。

これを実践するための「2+2+2+2の方法」を紹介しましょう。これは予防歯科先進国スウェーデンのビルクヘッド名誉教授が考案し[4]、科学的に有効性が証明されている方法です[5]。6歳以上の方は、是非、今日からこの方法をやってみてください! とても覚えやすいです。6歳未満の方には別のページ でお知らせしますね。

4つの「2」は、

  • 1日2回
  • フッ化物配合歯磨剤(1,450ppm)を2cm歯ブラシにのせて
  • 1回につき2分間歯磨きし
  • その後は2時間飲食を控える

という意味です。また、

歯磨きの終わりには、口の中の歯磨き剤を残して、手のひらに乗るくらいの少量の水を口に入れ、20秒間グチュグチュと歯と歯の間に行き渡るようにうがいをして吐き出してください。その後はうがいをしない方がいいです。これ以上フッ素を口の外に流してしまわないように!

最後の「2」である2時間飲食を控えるというのは、なかなか難しいのでこれを取り除いて3つの「2」にしようという動きもあるそうですが、私は個人的に歯磨き後に2時間飲食を控えることで、消化器官を休めることもできるので良いと思っています。食べ物が溢れる時代、ついつい誘惑に負けてダラダラと間食をしてしまいがちですが、この2時間の間に、口の中でフッ素が歯を強くしてむし歯から守ってくれているのだなあと想像していると、食べたり飲んだりする気が失せますョ。体重を気にしている人には、ダイエットにもなるのでは?!

歯周病編に続く


参考文献


  1. 厚生労働省. 平成28年歯科疾患実態調査.

  2. Murphy P. Be careful who you kiss! 25pc of Irish people skip brushing their teeth on a regular basis – Independent.ie 2015 [cited 2022 February 15 ].

  3. Hujoel PP, Hujoel MLA, Kotsakis GA. Personal oral hygiene and dental caries: A systematic review of randomised controlled trials. Gerodontology. 2018;35(4):282-289. Epub 2018/05/17.

  4. 西真紀子. 世界一強い熊が歯ミガキをしたら | Dental Life Design 2021 [cited 2022 15 February].

  5. Sonbul H, Merdad K, Birkhed D. The effect of a modified fluoride toothpaste technique on buccal enamel caries in adults with high caries prevalence: a 2-year clinical trial. Community Dent Health. 2011;28(4):292-296. Epub 2012/02/11.

著者プロフィール

Makiko NISHI

西 真紀子 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長

1996年 大阪大学歯学部卒業
     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
2001年 山形県酒田市 日吉歯科診療所勤務
2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修士課程修了
Master of Dental Public Health (MDPH)取得
2010年 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長
2018年 同大学院博士課程修了 
   Doctor of Philosophy(PhD)取得