むし歯の成り立ちにはたくさんの因子が関係していて、その因子の一つ一つに個人差があるので、むし歯になりやすい人となりにくい人がいます。不公平な話ですが、むし歯になりやすい人も、様々な予防方法を追加して駆使することで、予防はできます。

そのうちの1つがフッ化物洗口。皆さん、普段からフッ化物配合トゥースペースト(歯磨き粉)で歯磨き をされていますね。むし歯になりやすい人は、それにプラスしてフッ化物洗口を取り入れてみてください。薬局やスーパーマーケットでたくさん洗口剤が売られていますが(OTC)、日本の場合、フッ素が入っているのは2種類だけです。それも、棚の奥の方にヒッソリと置かれていることが多いのでよく探してみてください。その2種類とは、サンスターバトラーのエフコート®とライオンのクリニカフッ素メディカルコート®です。

両方とも、0.05%のフッ化ナトリウムが配合されています。フッ素濃度を表す数字は225ppmです。海外での主流は0.2%フッ化ナトリウム(900ppm)配合の洗口剤ですので、日本では約1/4の薄さのものしかOTCとして売られていません。歯科医院では450ppmや900ppmのものが売られています。

薄いフッ素濃度でも最大限効果を発揮するために、次のような注意点を取り入れてみましょう。これは、スウェーデン・イエテボリ大学のビルクヘッド教授(「2+2+2+2の方法」の考案者)が提案している5つのステップです(オンラインセミナー「日曜のフィーカ」2022年7月31日より)。

  1. 洗口回数は1日2回、とてもリスクが高い人は3回。
  2. 洗口後には2時間飲食を控えて。
    フッ化物洗口した直後に水で嗽をする人がいますが止めましょう。
  3. 洗口時間は1分間。頬を活発に動かしてブクブク嗽を。
    歯と歯の狭い隙間に洗口液を入り込ませるためです。
  4. フッ化物配合トゥースペーストを使って歯磨きをした後の2時間以内に洗口しないように。
    最も良い洗口のタイミングは就寝直前ですが、フッ化物配合トゥースペーストを使った歯磨きが就寝前にできるのならそちらを優先しましょう。
  5. 1回に使用する洗口液の量は最大限の10mlで。

約50種類ものフッ化物配合洗口剤がOTCで売られているスウェーデンでは、味のないタイプもあり、高齢者やドライマウスの方、口腔粘膜が敏感な人に重宝されています。

また、スウェーデンだけでなく広く国際的には6歳未満にフッ化物洗口をさせるのは禁忌とされています[1]。小さなお子さんは嗽が上手にできなくて液体をスッと飲み込んでしまう場合があるからです。ところが日本では、上述の2製品に4歳以上のお子さんに使用するよう勧めています。保育所や幼稚園やこども園で集団フッ化物洗口をしている自治体もあります。私は個人的にこの点について賛成しかねます。日本独特の根拠があるのかもしれませんが、お子さんの安全のためにあまり国際的な基準から逸脱しない方がいいのではないでしょうか。


写真説明

日本にはたくさんの洗口剤が売られているのに、ほとんどすべてにフッ素が入っていないと、ビルクヘッド先生が怒っていましたよ!


References


  1. Marinho VCC, Chong LY, Worthington HV, Walsh T. Fluoride mouthrinses for preventing dental caries in children and adolescents. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2016;(7).

著者プロフィール

Makiko NISHI

西 真紀子 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長

1996年 大阪大学歯学部卒業
     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
2001年 山形県酒田市 日吉歯科診療所勤務
2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修士課程修了
Master of Dental Public Health (MDPH)取得
2010年 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長
2018年 同大学院博士課程修了 
   Doctor of Philosophy(PhD)取得