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“ppm”ってなぁに?

 フッ素がむし歯の予防にとても効果を発揮することはよく調べられていますが、上手に使用するには、ごくごく微量のさじ加減が必要です。そのため、トゥースペースト(歯磨き剤)洗口液 に配合するフッ素の濃度を “ppm” という単位で表すことが慣例になっています。

 “ppm” の意味は、英語でいう ”parts per million” です。つまり、100万分の1というわけです。よって、1ppmは、0.000001、 “%” で示すと0.0001%です。たとえ “%” で示しても、何だか0が多くなってきましたね。1個見落としそうじゃないですか? そのために 聞き慣れない “ppm” を使っているのです。

 飲料水にフッ素が入っているとむし歯になりにくいということは昔から知られていましたが、少し濃度が濃くなるとフッ素症といって、歯が着色してしまいます。適正な濃度は1ppm前後だといわれています。“ppm” に換算するおかげで覚えやすいですね!

 トゥースペーストの場合は、その千倍の1,000ppmでやっと効果が認められています[1]。上限は、世界で売られているものでは5,000ppmが最大で、むし歯のリスクの高い16歳以上の人たちに使われています。日本では最大が1,450ppmで、これは効果が認められている標準的な濃度です。今、専門家らの間で5,000ppmを厚労省に認可してもらおうと話合っているところです。

 7歳以上の人には1,450ppmを使ってほしいです。0歳から6歳までは1,000ppmを使ってください。日本で売られているものは950ppmが多いでしょうか。1,450ppmとか950ppmと半端な数になっているのは、法律で決められた値(1,500ppmや1,000ppm)を誤差で超えないよう、大事を見てということらしいです。

 日本で売られている子ども用の450ppmのトゥースペーストは、世界ではもう時代遅れと言われています。スウェーデンでは20年以上前に廃止されたそうです。なんでも、最後まで抵抗していた小児歯科の偉い先生がようやくエビデンスがないと認めたそうです。その先生は、自分が500ppmの子ども用トゥースペーストの製品の開発に関わっていたのでなかなか否を認められなかったとのこと。アイルランドのホームページ でも、お店に売られていても500ppm未満は使わないようにと書かれています。

 洗口液は一度に使う容量が10mlとトゥースペーストに比べて多いので、フッ素の濃度は1ランク下がって、大人用では900ppm、子ども用では225ppmが毎日の利用として海外で勧められています。洗口液の場合は、“ppm”の表示よりフッ化物の濃度で示されている場合が多いかもしれません。よく使われるのはフッ化ナトリウムで、0.2%フッ化ナトリウム溶液には900ppm、0.05%フッ化ナトリウム溶液には225ppmのフッ素が含まれています。

 

写真説明

トゥースペーストを選ぶ時は、“1,450ppm” と明記しているものを!


References


  1. Walsh T, Worthington HV, Glenny AM, Marinho VCC, Jeroncic A. Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2019;(3).

筆者プロフィール

Makiko NISHI

西 真紀子 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長

1996年 大阪大学歯学部卒業
     大阪大学歯学部歯科保存学講座入局
2000年 スウェーデン王立マルメ大学歯学部カリオロジー講座客員研究員
2001年 山形県酒田市 日吉歯科診療所勤務
2007年 アイルランド国立コーク大学大学院修士課程修了
Master of Dental Public Health (MDPH)取得
2010年 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)理事長
2018年 同大学院博士課程修了 
   Doctor of Philosophy(PhD)取得